えっ!ゴリラじゃなかったの? 「ごり押し」の“ごり”の意外な正体…「とどのつまり」の“とど”は日本三大珍味で知られる“出世魚”だった
実はかなり多い“魚に由来する慣用句”
日々、水産関連の取材に携わる“魚記者”として、いつでも「意外性があって読み応えのある原稿を書きたい」と思う一方で、言葉の勘違い、誤用は避けたいという意識もある。時代とともに言葉は変化すると文化庁も認めているが、慣用句などで正しい言葉の言い回し、ひいてはその語源も知っておきたいと思っている。それが“魚”に由来するものであればなおさらである。【川本大吾/時事通信社水産部長】
【写真】ゴリラではない“ごり押し”の意外な語源。“とどのつまり”の“とど”の正体も
文化庁は毎年、日本語に関する世論調査を公表し、メディアでもその一部が紹介される。昨年の調査結果をみると、しっかりと食事する様子を「がっつり食べる」、のんびりした様を「まったりする」、あいまいではっきりしないことを「ふわっとした」、時間や手間をかけずにを「さくっと終わらせる」といった表現について、4~5割の人が「使う」と回答していた。
これらは「擬態語」に分類され、誤用というわけではない。比較的、新しい言葉として辞書にも記載されるようになっており、筆者も違和感なく使っている。従って、回答結果に対しても「そんなところだろうな」という印象だった。
その中で、「ごりごりの車好き」(筋金入りの車好き)については、使う人は2割と少なく、「使わない」はおよそ8割。筆者もあまり使わない慣用句だが、「ごりごり」=「筋金入り」と捉える人がいることを再認識した。
“ごり”って何?
調査結果にはなかったが、この時にふと頭に浮かんだのが「ごり押し」という言い回しだ。聞き慣れた言い方で比較的広く使われていながら、かつて筆者は「ごり押しの“ごり”って何?」との疑問にかられ、由来を探ったことがあるからだ。
知っていることを自慢したいわけではないが、何人もの人にそのクイズを出してきた。同庁のような大規模調査ではないが、正解率は1割以下。10人以上に聞いて、知っていたのは今のところ1人だけだ。
「ごり押しの“ごり”って何だか分かりますか?」という質問に対し、最も多いのが「ごりごり押す」であった。ごり押しが聞き慣れているため、そう言われてもおかしいとは思わない。が、“強引に押す”際の擬態語として「ごりごり」は妥当だろうか。強引に押すならむしろ「ぐいぐい」ではないか。
さらに別の回答として「ゴリラが無理やり…みたいな」という印象を語る人もいる。これもまんざらおかしな回答と言い難いが、“強引に押す”の代表がなぜゴリラなのか。たとえば、関取の方がイメージしやすくはないか。それに、果たしてゴリラは慣用句が生まれた時代にポピュラーな存在だったか、という疑問も残る。
不正解に対するツッコミはこれぐらいにしよう。正解は「ゴリ」という川魚である。筆者は魚記者であり、ことわざや慣用句に魚名が使われることが多いため、かなり前から意識して頭に入れている。
[1/2ページ]