「河野太郎」インタビュー トランプ時代の安全保障は「脱・日米同盟偏重」「NATOのインド太平洋への拡大を」
河野太郎衆院議員(元外相、元防衛相)のように、「若手」のころから首相、自民党総裁を目指すと公言し、多くの著書を世に問い、果敢に総裁選に挑んできた政治家は少ない。大物議員のお家芸とも言える政局的な「寝技」とは一線を画し、激しい政策論争で頭角を現してきた。このほど発足させた国会議員勉強会のテーマとした社会保障から、ポスト・トランプまで見据えた安全保障、人口減少下の教育、保守の意義―。「永田町の異端児」が彷徨する日本の針路を照らし出す。
(インタビューは2025年3月27日に実施しました)
【政策ニュース.jp×紀尾井町戦略研究所:聞き手=市ノ瀬雅人/政治ジャーナリスト】
【写真】まったく見分けがつかない! 本人とそっくり「河野太郎アバター」とは
財政は「崖から真っ逆さま」の危機
――社会保障に関する国会議員の勉強会を立ち上げた。
(河野太郎氏、以下同)その前に、まずは国の財政規律を立て直すことだ。日本政府の普通国債発行残高は約1,100兆円。今後も現在のように国債を毎年30兆円も出せる状況ではない。ゼロ金利政策の転換で金利が上がり始め、国債の利払い費が今後どんどん増え、プライマリー・バランスの黒字化で足りるような時代は既に終わった。財政収支をしっかり均衡させねばならない。
日本は市場経済だと言いながら、すぐに政府が出てくる。例えば、半導体事業を行うラピダス株式会社への政府による2兆円近いとされる資金支援などだ。今の日本の財政状況では本来、できないはずだ。基金を含めて財政の無駄を徹底的に削るべきだ。麻生内閣の時に基金をつくるかどうかで大議論したが、現在は基金事業が200を超す。財政は坂道を転げるどころか、崖から真っ逆さまに転落しかねない。
――国の歳出で社会保障費の割合は大きい。
日本の税、社会保障制度は「応能負担」になっていないことが問題だ。保険料は現役世代の賃金への課税と同じことで、多くの医療費を使うのは高齢者だ。そして、金融資産の3分の2は高齢者が持つ。負担できる能力のある人に、きちんと負担してもらおうとすれば、賃金課税だけでは間に合わない。「資産割り」を取り入れ、保険料は金融資産も含めて算定すべきだ。
そして、低所得者に対する給付もある「給付付き税額控除」の導入が必要だ。これは、所得が一定以下の場合には「マイナスの所得税」である「給付」を出し、所得が一定水準を超すと所得税を課税していく制度。つまり、負担できる人には負担を求め、できない人には国が対応することになる。
人口は逆ピラミッド、現行の年金「仕送り方式」は限界
――年金制度改革は長年の持論だ。
公的年金制度に関しては、人口減で人口構成が逆ピラミッド型である中、現役世代から高齢者への「仕送り方式」である現行の「賦課方式」は持続できない。自分たちが将来に受給する年金を積み立てる「積み立て方式」に改めるべきだ。
厚生労働省は「積み立て方式にすると、賦課方式による高齢者への仕送り分との二重の負担になる」と主張する。今の若い人は、iDeCoやNISAで運用すれば現行の公的年金より利回りは良いと思っているが、現行制度では公的年金保険料を無理にでも支払わないとiDeCoはできない。結局、実は現役世代には既に重荷だ。積み立て方式にすると、この負担部分が可視化される。よって、被用者年金は、賦課方式から積み立て方式に変えた上で、二重負担部分は超長期の国債の発行により、一つの世代への負担集中を避け、長い時間をかけて解消するのが正しい。
基礎年金部分は保険料でなく税で賄うべきだ。保険料財源の場合、保険料を支払えないほど低所得の人は老後の基礎年金額が減らされるとなると、生活の最低保障機能を果たせていないことになる。よって最低保障部分は税財源がふさわしい。高齢者の生活保護受給と最低保障年金制度を一体化していくことが大事だ。これで老後の最低限のセーフティーネットとなる。年金制度の1階部分は最低保障年金、2階は積み立て方式の年金、3階はiDeCoなり民間の年金保険などという形の「3階建て」が適切だ。
[1/3ページ]