「初対面の相手」との会話をスムーズに進めるために有効な入口とは? 相手の心を開く質問は3種類ある
誰だって初対面の相手とは、何を話したらいいか迷うもの。沈黙が続けば、焦りも募る。焦りが募れば思考力がまひし、相手はだんだんけげんな顔に――。
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そんなバッドシナリオに引き寄せられないためにはどうすればいいか。
緊張した雰囲気を和らげるアイスブレイクに必要なのは「ほんの少しのリサーチとシンプルな質問です」と語るのは、プロインタビュアーの早川洋平氏。コネゼロ、知名度ゼロから多くの著名人を含む2000人以上への取材を成功させたキャリアの持ち主だ。早川氏は、新著『会う力 シンプルにして最強の「アポ」の教科書』の中で実際のエピソードを交えながら、初対面時に会話の糸口となる質問の種類を紹介している。
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相手が答えやすい質問から対話を始める
お相手に質問する力のことを、僕は他問力と呼んでいます。多くの方が一般的にイメージする質問力のことだと考えていただいて差し支えありません。
では、どのような質問をどんな順番ですれば良いのでしょうか。僕は次のように考えます。
(1)「相手が答えやすい質問」
(2)「本題に関する質問」
(3)「縁を紡ぐ質問」
まずは(1)の「相手が答えやすい質問」です。これは本題に入る前のアイスブレイクのようなものと考えていただくと良いと思います。目的は場を和ませたり、緊張を解きほぐしたりする話題で、できるだけ心が通う状況を築くこと。具体的には次の3問を基本に考えていただけたらと思います。
(1)直近の仕事や力を入れている活動に関する質問
お相手の最新の活動に関連する質問が冒頭にはうってつけです。小説家の方なら最新作の感想を交えつつ物語の着想をうかがうのも良いですし、起業家や科学者の方ならば、事業や研究が今後私たちの生活にどんな恩恵をもたらしてくれるのかをうかがうのも良いでしょう。お相手が力を入れていることの体験談や、講演会や展覧会など何らかの催しに足を運んだ感想などを織り交ぜて質問するのもおすすめです。
日本を代表するイラストレーターの宇野亞喜良さんにお目にかかった時のこと。
冒頭でこんな質問をさせていただきました。
「この作品はどのくらいの時間で描かれたのですか」
僕が取り出したのは彼が絵のみならず文章も手がけた絵本。さらに「わが家では子どもたちに大人気で寝る前の定番なんです」とパーソナルな体験を共有させていただくと、宇野さんは顔をほころばせて制作ストーリーを語ってくださいました。
企業向けの講演でご一緒させていただいたファッションディレクターの干場(ほしば)義雅さんとのやりとりも記憶に残っています。本番前の控え室でごあいさつした後、僕はこううかがいました。
「先日、ペッレ モルビダ(干場さんがクリエイティブディレクターをつとめるブランド)の旗艦店にうかがったのですが、どのタイプのカバンにするか悩んでいるんです。どれを選べば良いかアドバイスをいただけないでしょうか」
彼は「え! わざわざお店に来てくださったんですか」と幾分驚きつつも喜んでくださったようで、僕の嗜好と生活スタイルにあった最適なカバンをオススメしてくださいました。
このように、この段階での質問はあなたが感じたことをポジティブな形で率直にうかがえば問題ありません。そこにテクニックや駆け引きは不要です。たくさんの体験を用意する必要もありません。あくまでアイスブレイクなので、シンプルにひとつかふたつ用意しておけば十分です。
(2)共通点に関する質問
この質問が最も効果的なシーンは何といっても自分とお相手をつないでくださった紹介者の方がいる時です。「~~さんとは長いお付き合いなのですか」というような簡単な質問で構いません。お相手にとって取材や紹介は日常茶飯事です。当日その場になっても果たして誰からのつながりで実現した場だったのか分かっていらっしゃらなかったり、忘れてしまったりしていることは思いのほかあるものです。
ゆえに、冒頭で紹介してくれた方のお名前をたったひとこと出すだけで「ああ、そうでした。~~さんの紹介でしたね」と話が弾んだり、空気をやわらげたりすることにつながっていきます。
紹介者がいない場合でも、出身地や母校、趣味、特技、好きなスポーツや本、映画など共通点から入るのも十分効果的です。たとえばコシノジュンコさんに初めてお目にかかった時。正直にいえば、僕はインタビュー前日まで彼女との共通点を見つけられずにいました。しかし当日朝に見つけたある記事で、ご子息が自分と同い年だということが判明。わずかこれだけのことですが、共通点は共通点です。そこで僕はお目にかかって早々「ご子息は1980年のお生まれでしょうか」とうかがいました。すると「あら、そうよ。どうして?」と答える彼女に、僕は同年生まれだということをお伝えしました。
「そうなの? それは奇遇ねえ」と驚く彼女に、僭越ながら僕は「母親」としての表情を垣間見ました。さらには「今日はどちらからいらしたの?」「いつもひとりでこんな沢山の機材を持って取材しているの? 頑張るわねえ」とコシノさんの方から色々と話しかけてくださいました。おかげですっかり緊張が解けた僕は、図々しくも「息子」のような心持ちで、ご子息をはじめとするご家族のことをざっくばらんにうかがいました。
すると驚いたことに、ご子息と僕の兄が生まれた病院が同じことが判明。そればかりか、お孫さんと僕の子どもの名前が同じだったり、彼女のご主人と僕の地元が同じだったりすることもわかりました。おかげで当日のインタビューが無事に運んだことはもちろん、その後もたびたび新作の発表会やパーティに呼んでいただくなど、交流の機会をいただくことができました。
ほんのわずかな共通点からここまで関係が深まり広がっていくのか……と共通点が持つ力の大きさを改めて感じた出来事でした。どんな小さなことでもかまいません。ぜひみなさんも共通点に関する質問を積極的にしてみてください。
(3)プライベートの興味・関心に関する質問
事前リサーチでお相手の興味・関心が明確になっている場合は「最近~~にとても熱中されているのですね。きっかけは何だったのですか」といった形でうかがうのもおすすめです。複数の興味・関心が判明しているようなら、そのなかであなた自身が最も興味があったり、詳しかったりするものを選ぶと良いでしょう。「共通点に関する質問」を兼ねることにもなります。
その際、もしご自身の専門性やリサーチで得た情報もあるようなら、あわせてお相手にお伝えできると良いでしょう。ただしその際は「自分の方が詳しい」というような上から目線のスタンスにならないこと。あくまで「ご存じかもしれませんが」「お役に立てるかわかりませんが」などと前置きしたうえでお話ししましょう。
こうした謙虚な心と姿勢で接すれば、決して失礼にはあたりませんのでどうか安心してください。お相手にとって初耳の何かをお伝えできればベストですし、すでにご存じのことだったとしても、ネガティブな印象を抱かれることはないはずです。
むしろそこからその事柄についてより深いお話をしてくださり、盛り上がった経験が僕には少なからずあります。
情報だけでなく、現物を「プレゼント」というかたちでお渡しするのも良いでしょう。ただし、物理的にも精神的にも負担にならないよう軽く・小さく・保存がきくものに留めること。たとえば僕自身は、健康意識が高いと思われる方には、一般的にはあまり知られていないようなスーパーフードを手土産として持参して「これ、ご存じですか?」と冒頭でうかがうことがよくあります。