なぜ「使えない東大生」が職場で生まれるのか 上位0.3%の成績優秀者より “明大の飲食経験者”が求められる現実
4月11日、今年も日本武道館で東京大学の入学式が執り行われる。東京大学の入学者数は昨年3072名。総務省統計局の発表によれば、2024年の新成人は106万人とあり、仮にこれを一学年の総数とすると、単純計算で東大生は「345人に1人」、人口の上位およそ0.3%の成績優秀者ということになる。ただ、その一方でしばしば指摘されるのが「東大生は仕事では使えない」という“定説”である。自身も東大出身のライター・池田渓氏が、人事コンサルタントに取材して知ることとなった“耳の痛い話”とは――。
(前後編の前編)
***
【写真を見る】やはりレベルが違い過ぎる… 「東大」と「国立大医学部」の偏差値を比較すると
※この記事は『東大なんか入らなきゃよかった』(池田渓著、新潮文庫)の内容をもとに、一部を抜粋/編集してお伝えしています。
基本的には「大学ランク」と「学生の質」は驚くほどに一致する
僕は東大大学院の博士課程を中退して街をぶらぶらしていたときに、以前に著者として本を書いたことのある出版社から「編集者をやらないか」と声をかけられ、「それも悪くないな」と思って社会人となった。
その出版社で4年ほど編集者として働いた後、円満退職して、今はフリーランスの書籍ライターという仕事で生活している。就職活動を経験していないため、僕自身は学生の就活事情にそれほど詳しくはない。
ただ幸いなことに、毎月末になると卓を囲む麻雀仲間の中に、東大経済学部の卒業生であり、大手人材情報会社勤務を経て独立し、現在は名だたる企業の採用活動をサポートする人事コンサルティング会社を経営している小林倫太郎さん(41歳)がいる。
ある日、小林さんには麻雀開始の1時間ほど前に雀荘近くの喫茶店に来てもらい、取材料としては格安のコーヒー1杯をおごって、東大生の就活事情について話を聞いた。
「就職活動ってのは、学生が全方位的な資質を試される初めての戦いなんですよ」
注文したコーヒーが届くと、小林さんはそう切り出した。
「自分の能力や志向に合った業界の選び方から、かぎられた時間を活動にどう配分するかの判断、活動時間の絶対量を生む体力と気力、エントリーシートの文章でいかに自分を売り込むか、そして面接での立ち居振る舞いまで、すべてが問われるんですね」
どこをゴールと定義するかは学生次第だが、就職活動で「成功した」と胸を張れる結果を残すためには、多方面にわたる広く浅い能力と、それらをうまく統合して発揮する高い自己管理能力が不可欠なのだという。
「多いところは4次、5次と選考を重ねますし、世間で言われているほどごまかしは利きませんよ。入社難度の高い企業の採用担当者をごまかし通せるなら、それはそれで立派な能力と言っていいでしょう」
大学の就職課の指導のあり方などにより多少の誤差はあるが、一般的には大学のランクと学生の就職活動の質は驚くほどに一致するのだという。
それは、筆記試験の点数の高さや学生時代に複数の資格を取得しているといったことだけによるものではない。単純な行動量の多さや、無難な服装や髪型を選ぶ常識、面接時のそつのない受け答えなどにおいても、「学歴はやはり正直だ」というのが、「社会に出たら学歴は関係ない」という建前の裏での採用担当者たちの共通認識であるとのことだった。
次ページ:採用担当者が「東大までの人」と呼ぶ「残念な学生」たち
[1/3ページ]