米国にも突き刺さる「トランプ関税」 低所得者層を直撃、国民の3分の2が景気後退を予測する現状で痛みに耐えられるのか
約31万人分の雇用が消える
相互関税の発表に伴う最近の国際金融市場の急変を受けて、米国では今後の経済動向を危ぶむ指摘が相次いでいる。
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米連邦準備理事会(FRB)は米国の追加関税について、予想以上に長期のインフレにつながる可能性があると指摘し、物価が上昇するのは輸入品だけという見方に疑問を呈した。
民間の独立税制調査機関タックス・ファウンデーションは、相互関税以前の関税引き上げ分のみでも約31万人分の雇用が消えると予測した。
このような状況から、米国にスタグフレーションが再来するという懸念が生まれている。高いインフレと高い失業率が併存するスタグフレーションは1970年代の米国で起きた。当時はオイルショックが原因だったが、今回は関税ショックが同様の作用を及ぼすというわけだ。
与党内にも危惧する声
米国では各方面から関税政策を変更せよとの要求が強まっている。
最初に反応したのは経済界だ。貿易関連団体はもちろんのこと、事業に悪影響を及ぼすとして、レストラン協会や製造業者協会、住宅建設業者協会などほとんどすべての業界団体が関税撤廃を求めている(4月3日付AFP)。
与党共和党内でもトランプ大統領の政策を危惧する声が高まっている。関税引き上げにより国内経済が悪化すれば、来年の中間選挙で上下両院ともに敗北してしまう可能性があるからだ(4月3日付ロイター)。
関税引き上げ反対の声が日に日に高まっているが、トランプ氏の方針は一向に揺らぐ気配を見せていない。
「耐え抜け」と訴えるトランプ氏
トランプ氏は4月3日、米国経済を患者に例えて、重い病気で多くの問題を抱えていたので手術を受けた。好景気が必ずやってくると自信を示した。6日にも、何も下落してほしくないが、何かを治すためには時に薬を飲まなければならないと強弁した。
トランプ氏には、高関税が100年前の米国を豊かな国にしたという信念があると言われている。大統領2期目に入り、同じ考えを持つ側近を配置したことで長年の目標がついに達成できたとの思いがあるのだろう。
トランプ政権のブレーンで、関税政策を進言したオレン・キャス氏は、従来の保守は市場経済と自由貿易を掲げてきたが、米国社会の弱体化を解決できなかったと力説した。だから関税であり、短期的には様々な痛みを伴うかもしれないが、長期的には大きな利益をもたらすという(4月3日付朝日新聞)。
「耐え抜け。簡単ではないが、最終的な結果は歴史的なものになる」と鼓舞するトランプ氏だが、米国民ははたしてこの痛みに耐えられるのだろうか。
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