男尊女卑な傾向は“九州”だけの問題か? 佐賀在住の編集者が語る「さす九」騒動…問題の根源は「都会VS地方」ではないか

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コンパニオンの女性が

 私が住む唐津市は世界文化遺産・唐津くんちの街である。その期間は知り合いの家へ行き「ふるまい」を受ける。盛大な「くんち料理」が大広間に並び、酒を飲むのだ。招待されるのは基本的には男である。その男が連れてきた女性は「客」として宴会に参加することはできるが、その家の女性・手伝いの女性は基本的には台所で料理の準備・提供をし、彼女達だけで何かを食べる。大っぴらに酒を飲むことはあまりない。

 ただし、繰り返すが、果たしてこれが九州だけの風習かといえば、そうではないのではなかろうか。これは私が、富山県富山市と愛媛県松山市で経験したことである。まず、富山では商工会議所で講演をしたのだが、その時、参加者200人のうち、女性は恐らく5人以下だった。そして、その後、男の参加者は主催者の仕切りにより、数か所のキャバクラへ行き、接待を受けるのである。そこでは、従業員の女性が恭しくビールを注いでくれるので私は、「必要ないです。普通に喋りましょう」と伝えた。

 そして松山では、自動車販売会社の総会でインターネットをいかに活用するかの講師を仰せつかった。その後のホテルの大宴会場での懇親会では100人の参加者中、女性はたった2人。さらにコンパニオンの女性がズラリと壁際に並んでいる。彼女達はビール瓶を持って少しでも空いているグラスがあれば注いでくれる。いずれも、東京ではあまり見かけない風景なのではなかろうか。

都会VS地方では

 そして宴会の中で行われたビンゴ大会でも、女性が商品を渡す。その後、富山の時と同様に、数か所のキャバクラへ分散して行くのだが、この会場にいたコンパニオン女性がキャバクラ嬢として相手をしてくれるのだ。いずれの会場でも男性は「ビール!」「水割り、濃い目!」となぜか強い調子で命令をしていた。

 この2つの件もあったため、「#さす九」については九州独自のものではないのでは……といったことを、このハッシュタグ騒動以降思うようになった。何しろ「都会vs地方」的な声が多いのだ。

 そこは九州以外の女性がいかに考えるか、というコメントが参考になるので、ぜひとも「#さす九」なのか「#さす四」「#さす沖」なのか、など意見を知りたいところである。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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