日枝氏と金光氏の静かなる権力闘争が始まった ホリエモンは株主総会でどう動くのか
復権狙う日枝氏
フジテレビ内で暗闘が始まっている。日枝久氏(87)は同社と親会社のフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の取締役相談役を退いたが、右腕である金光修・FMH社長(70)の手を借り、復権を狙う。一方で金光氏は復権の阻止を目指すものの、大株主は金光氏の退任を要求している。最新の独自情報である。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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第3者委員会から問題点を指摘されたフジの編成と広報の担当執行役員に鈴木吉弘氏(56)が就いた。2009年に1度退社し、任天堂関連会社スタッフやフリーとして活躍しながら、2017年に復社した人である。
過去にドラマ「ガリレオ」(2007年)シリーズなどのヒット作をプロデュース。脚本まで書く腕利きのクリエイターだが、日枝氏が保守的な人事をしていた従来のフジなら考えられない。
一方でサントリーホールディングスはフジへのCM出稿の再開を検討している。社内外に希望の光が見え始めた。社員たちはホッと一安心かと思われたが、その表情はいまだ晴れない。
「第3者委の調査から抜け落ちたハラスメントがある。たとえば元上席役員から元報道幹部へのパワハラ疑惑。社内では有名な話だった。日枝氏の会社への影響力が失われそうにないことも不安」(フジ関係者A)
日枝氏が復権するかも知れないという見方はフジ社内で急速に広まりつつある。理由の1つは金光氏の言動にある。
3月27日、金光氏はFMHの新役員人事案(6月の株主総会の承認で決定)とフジ役員人事を発表した。その際、「日枝氏の影響は受けていない」と胸を張りながら、一方で「最終的に固まった(役員人事)案はお届けした」と語った。
フジ関係者Aは疑問を投げかける。
「なぜ辞めていく日枝氏にわざわざ新役員人事案を見せる必要があったのか。承認を得る必要があったからではないか。金光氏は新役員人事の方針を決めるにあたっても日枝氏と話し合い、『早い段階から経営刷新の方向性に賛同し、任せると言われていた』と語っている。これで日枝氏の影響を受けてないと言えないだろう」(フジ関係者A)
つい最近まで支配力と人事権に強く執着していた日枝氏が、考えを急変させたというのも妙な話だ。日枝氏は1月中旬、遠藤龍之介・フジ前副会長(69)から遠回しに辞任を促されると、「お前らが辞めろ」と突っぱねた。
また役員側が港浩一前社長(72)の後任として遠藤氏を提案したところ、これを拒否。清水賢治氏(64)の社長就任は承認したという経緯がある。
「日枝氏の力は残っており、自分の意思を金光氏によって行使しようとしているのではないか」(社員B)
金光氏は2019年、日枝氏の判断によってFMHの代表権を持つ社長になった。2021年から1年間はフジの代表権付き社長も兼務。社内では日枝氏の右腕として知られる。
金光氏は西武百貨店を経ての途中入社であるため、清水氏とは年齢が違うが、2人は1983年入社の同期。振り出しが編成部であるところも一緒。関係は極めて良い。
「金光氏にとって、清水氏はこれ以上なく組みやすい相手」(フジ関係者B)
金光氏の人物評をフジ関係者Bはこう語る。
「優秀だが、日枝氏の専横を許してきた筆頭格の人物で、功罪ある。FMH内の優良会社トップらと折り合いが悪く、敵も少なくない」
一方、日枝氏は取締役相談役を辞任した当初こそ、フジ社内では「腰椎を圧迫骨折したことで気力も体力も衰えた」との見方が強かった。しかし現在では「日枝氏は復権を狙っている」という考え方が広まっている。
「日枝氏は金光氏と何度も接触しているくらいなのだから、会話が出来る状態のはず。それなのに中居正広氏の性暴力問題や自分の退陣にあたってのコメントを一切出さない。あまりに不自然。第3者委も『日枝氏には説明責任はある』としている。沈黙は多弁な日枝氏らしくない」(フジ関係者B)
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