真打に昇進した「立川幸之進」が語る21年の道のり 「3団体で前座を務めた経験は、かけがえのない財産」
真打になってからが本当の勝負
桜の開花と時を同じくして、落語界が新たな門出に沸いている。落語協会(柳家さん喬会長)では真打に昇進した5人が昇進披露興行に臨んでおり、落語芸術協会(春風亭昇太会長)に所属する3人は5月に披露興行をスタートさせるという。
寄席の関係者が解説する。
「落語協会、落語芸術協会、そして落語立川流や五代目円楽一門会では、総勢19人が真打に昇進します。今後は弟子を迎えられるようになりますし、寄席ではトリ(出番が最後の主任)を務めることになる。これで名実ともに一人前ですよ」
現在、都内で活動する落語家はおよそ600人。うち400人が真打とされる。
「いまの落語界は前座や二つ目といった若手が少ない、逆ピラミッド構造です。つまりは、真打になってからが本当の勝負というワケ」
異色の存在
中でも異色の存在が、落語芸術協会に所属する立川幸之進(こうのしん・45)だ。
「亭号から分かる通り、本人も師匠の立川談幸(70)も、立川談志が創設した落語立川流の一員でした。師匠は談志が死去した4年後の平成27年に、二つ目だった幸之進ら弟子たちと落語芸術協会に移籍しました」
当時、幸之進は35歳になっていたが、新たに2年間の前座が課された。
「落語界では入門から15年ほどで真打に昇進するのが一般的。平成16年に落語立川流に入門した幸之進は、移籍がなければ平成30年ごろには真打に昇進していたでしょう。それが2度目の前座という足踏みを強いられたことで、昇進まで21年もかかってしまった」
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