開幕早々に主軸が離脱「広島カープ」の非常事態…負傷者が相次ぐ背景に「伝統のキャンプ猛練習」
カープの伝統
新井監督は今春キャンプで、野手陣に徹底的な振り込みをさせた。
「野手陣は打撃練習に特化したキャンプを行ったと言っていいでしょう。全体練習終了後の約1時間、素振りやティー打撃をするんです。若手が主体でしたが、どの選手も休みナシで、一心不乱にバットを振っていました。終了の合図と同時に、座り込む選手が続出したほどです」(スポーツ紙記者)
そんな“昭和式の練習”について、新井監督は「汗をかかないと(技術は)覚えられない」と記者団に説明していた。
昨シーズン、9月の歴史的失速がなければ、優勝も夢ではなかった。最大の敗因は得点力不足で、シーズンを通してもチーム打率2割3分8厘、総本塁打数52はともにリーグワースト。打撃練習の倍増は予告されていたが、ここにさらに加わったのが「坂道ダッシュ」である。
キャンプ中のメイングラウンドとなる宮崎県日南市・天福球場の左翼席後方には約100メートルの緩やかな坂道がある。選手たちはそこを走り上がった後、センター後方にある急な坂道も、8本駆け上がっていた。「坂道ダッシュ」は昭和時代から続く広島の伝統的練習だが、新井監督はその様子を見て、
「みんなよく走った。もうちょっときつくしないとな」
と笑っていた。「きつくする」は冗談だが、現役ドラフトで日本ハムから移籍してきた鈴木健矢(27)は「こんなに走ったことはなかった」と“悲鳴”を挙げていた。記者団にそのコメントを出すまで息が上がって、暫く喋れなかったほどだ。
「キャンプが終わり、マツダスタジアムで最初の練習が行われた3月3日も全体練習後のロングティー、連続ティー打撃の練習が行われました。同日は雨が振ったり止んだりで予定していた練習もできなかったんですが、室内練習場に移ってからも、若手10選手がバットを振っていました」(前出・同)
チーム関係者によれば、バットを徹底的に振り込むのは2月上旬までの予定だったという。しかし、思うような成果が上げられなかったからか、3月に入っても練習量が減ることはなかった。「若手は一年中キャンプだから」と、新井監督は話していた。
「ドラフト1位ルーキーの佐々木泰(22)がその2日後のオープン戦途中、左足を負傷しました。四球での出塁後、次打者の小園海斗(24)がライト前ヒットを放ち、佐々木は三塁まで激走。ベース到達と同時に左足太股の裏に手をやり、顔をしかめていました。三塁コーチャーが近寄り、ベンチに向かって両腕でバッテンを作り、代走が送られました」(前出・同)
佐々木はリハビリ組に行き、開幕一軍メンバーにも入ることができなかった。同日のオープン戦が行われた横浜スタジアムは雨天と寒波に見舞われていたのだが、
「対戦したDeNAの三浦大輔監督(51)はオースティン(33)を1打席で交代させるなど、怪我をさせないよう配慮していました」(前出・同)
新井監督の“鍛える”方針が裏目に出てしまったのでは――キャンプ初日から続く猛練習による疲労蓄積を、選手たちに重ねて見た関係者やファンも少なくなかったはずだ。
また、チームにとって最大の戦力ダウンとなったのが、正捕手・坂倉将吾(26)の離脱だ。3月2日の楽天戦前、新井監督は「早くても(復帰まで)2カ月くらい掛かるかなという感じ」とこぼしていた。広島に限らず、近年では主力選手の故障について詳細を明かすことはほとんどなくなった。逆に「2カ月くらい」と明かしたことで、「本当はもっとかかるのではないか」と勘繰る声もライバル球団から聞かれたが、今の広島は「補強」に向けて動くこともできない。
広島は、支配下登録選手数が上限の70人まで「あと2人」と迫る68人でキャンプインした。海外フリーエージェント権で米球界挑戦を目指した九里亜蓮(33)が思うような交渉が進まず、オリックス移籍を決めたとき、人的補償も行使できたのだが、それを見送った。人的補償で選手を得れば、支配下枠の空きが「1」になってしまう。そうなれば、育成選手のモチベーションにも影響するからで、「空き」は戦力的に本当に困ったときのために残しておきたいと判断したようだ。
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