中居正広氏に「あらゆる選択肢」3時間会見をたった1人でこなした切れ者、フジ新社長 日枝派一掃の静かな“クーデター”
実直な人柄で評価は高い
そもそも日枝氏が支配するフジテレビの取締役は22人(平均年齢は67.3歳)だった。親会社のフジ・メディア・ホールディングスも同じく17人(同71.2歳)。3月27日に開いた取締役会でこれらをそれぞれ10人(59.5歳)、11人(61.6歳)に一気に減らした。フジテレビの場合、取締役が22人もいること自体、意思決定の遅れや自浄能力の低下を招いた原因という強い批判が出ていた。
新体制を率いる清水社長は慶大法学部卒。2014年フジテレビ執行役員総合開発局長、2017年同常務経営企画局長、2019年フジ・メディア・ホールディングス及びフジテレビ取締役、2021年常務取締役、2022年専務取締役とトントン拍子で出世街道を歩んできた。
この経歴からすれば確かに“日枝チルドレン”と呼べるのだろうが、清水社長は「ゲゲゲの鬼太郎」「ちびまる子ちゃん」「幽☆遊☆白書」「ドラゴンボール」「Dr.スランプ アラレちゃん」など、超有名アニメを世に送り出している。日本を代表するアニメプロデューサーとしてつとに知られており、早くから社長候補として見られてきた人物でもある。映画事業局映画制作部長時代は、映画の出資者で作る製作委員会の間を取り持つ卓越した調整能力を発揮したという。
「清水社長は経歴から見ても大手芸能プロや有名芸能人に忖度するタイプではありません。テレビマンとしての実力や実直な人柄で評価は高い。会社の不祥事によって社長の座を手にして以来、すぐにフジ停滞の元凶だった取締役のリストラに着手し風通しをよくしました。中でも特に注目されるのがフジ・メディア・ホールディングスの独立社外取締役3人の任命人事です」(フジテレビ関係者)
独立社外取締役の役割としては経営方針や経営改善について、自らの知見に基づいて助言を行い、会社の持続的成長と企業価値の向上を図ることの他に、経営陣幹部の専任・解任など取締役会の重要な意思決定を通じて監督を行うことも含まれている。つまり、コンプライアンスに違反した局幹部を追放することが可能なのだ。
「6月に新たに任命される独立社外取締役の石戸奈々子慶大教授は、東京女子私立御三家と呼ばれる名門・女子学院を卒業後、東大工学部に進学。かつて『とくダネ!』のコメンテーターをしていたのでお手盛りといえばそうですが、デジタル絵本を使って子ども向け創造・表現活動を推進するNPOを運営するなど独特の研究をしています。
また、同じく稲田雅彦氏も東大大学院修了のAI研究者で、博報堂を経て歯科医療を支援するDX(デジタルトランスフォーメーション)系の会社を起業。森山進氏は英国勅許会計士でベルギーに住みながら、『スティーブ・モリヤマ』の名前で異文化理解を促す作家活動をしています。
言ってみれば、いずれもデジタルコンテンツやグローバルな思考法の持ち主。この陣容を見ると清水社長が古臭いフジ社内の風潮を切り捨てたうえでデジタルやAIを利用したグローバルなコンテンツ製作でフジを立て直すという戦略が透けて見えるようです」(同)
「フジはもうだめ」というより、「着々と進む静かなクーデターによるフジ刷新の可能性」の方に注目したい。
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