佐々木朗希を襲う「藤浪」と同じ“悪循環”…専門家は「メンタル改善など無意味。むしろ速球投手からの脱皮を」

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 第1回【佐々木朗希の“涙目”降板に「ガキが泣く姿を映す時間はない」…ダルビッシュ“元女房役”が厳しく叱咤 米メディアがやり玉に挙げた「3つの問題行動」とは】からの続き――。3月29日のタイガース戦で先発した佐々木朗希(23)は4四球と大荒れで、2失点で2回を途中降板。その結果、アメリカの一部メディアは佐々木のマイナー落ちに言及する緊急事態となっている。(全2回の第2回)

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 野球評論家の広澤克実氏は「本来であれば、メジャー2戦目の登板でノックアウトされたに過ぎません。『佐々木くんがMLBの洗礼を受けた』と同情的に報道することも可能だったはずです」と言う。

「ところが同情的な報道は少なかった。つまりメディアもファンも、単に『洗礼を受けた』だけでは片付けられない“何か”を佐々木くんが抱え込んでいると感じたのでしょう。その“何か”とは多分、佐々木くんと藤浪晋太郎くん(30)が重なり合って見えるということに尽きるのではないでしょうか。もともと投手は繊細なタイプが多く、阪神やヤンキースで投げた井川慶くん(45)のような本当に図太いメンタルの持ち主は珍しいのです。それでも投手はマウンドに立つと心のスイッチを切り替えて打者と対戦します。佐々木くんと藤浪くんに共通しているのは周囲の“雑音”をシャットアウトできず、むしろ頑なになってしまうところです。『頑なな態度』とは必要以上にこだわっている精神状態を意味しますから、冷静な気持ちでプレーすることが難しくなるのは必然です」

 頑なな態度が投球に悪影響を与える。メディアもファンも批判を強める。批判が伝わって、さらに頑ななプレーになってしまう。どんどん成績は悪くなり、どんどん批判が強まるという悪循環が始まってしまう。

「全員、私の悪口を言っている」

 広澤氏も同じ精神状態に陥ったことがあるという。具体的には2000年、佐々木が所属するドジャースと同じく、熱狂的なファンを抱える阪神タイガースに移籍してからの一時期だ。

「当時、私は複数のスポーツ紙を購読していました。朝に目を覚ますと、まずは紙面に目を通します。私に好意的な記事を載せてくれた新聞があっても、別の新聞には批判的な記事が載るものです。すると次第に甲子園を埋め尽くす阪神ファンが全員、私の悪口を言っているような気がしてきました。『観客の数が4万人として、自分の悪口を言っているのは結局、3000人とか4000人だ』と気持ちを切り替えられるようになるには、それなりの時間がかかりました。私の場合はネットのない時代でしたが、それでも大変でした。ネットに厳しい意見が投稿される佐々木くんや藤浪くんが批判を無視するのは難しいでしょう。特に2人とも生まれつき“アンテナ”が敏感なのだろう、という印象もあります」

 藤浪はNPB時代から制球難が問題視され、ネット上では批判が相次いだ。2023年に関西圏のローカル番組で「若い頃はエゴサーチしている時期もありました」と告白している(註)。

 藤浪の制球難をメディアやファンが批判すると、藤浪は頑なになって制球難がさらにひどくなる。批判が増えると、四死球も増える。まさに悪循環だ。

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