昔の天皇は農民の苦労を思って涙していたか――「百人一首」をめぐる論争にアイルランド人翻訳家が出した答え
「百人一首」を暗記している日本人は少なくない。しかし一首一首を味読し、その意味や背景まで深く考えたことがあるという人は意外に少ないのではないか。
たとえば巻頭歌で天智天皇は、「わが衣手(ころもで)は露にぬれつつ」と詠んでいるが、袖を濡らしたのは「露」か「涙」のどちらなのか。日本語なら曖昧なままでも構わないが、これを英語に翻訳するとなると何かしらの判断を下さねばならない。
アイルランド出身の詩人で、「百人一首」の英訳で複数の翻訳賞を受賞したピーター・J・マクミランさんも、「露」と訳すか「涙」と訳すか、大いに迷ったという。...