一夫多妻「ハーレム館」事件の被告が自宅で“連続自殺”していた 「保釈」を認めた裁判所の判断に、識者は「考えられない」と指摘

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 刑事裁判における判決言い渡しの直前、被告2人が保釈中に相次いで自殺をした。予定されていた判決公判は急遽中止となり、公訴は棄却された。用意されていた判決文も“お蔵入り”。これでは一体何のために捜査が行われ、審理が続けられてきたのか。自殺の予兆があったにもかかわらず、裁判所はその死を防ぐために何もできなかったのか。そんな問いを現代の司法制度に投げ掛ける事件が、都内で起きていた。
【水谷竹秀/ノンフィクション・ライター】

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 東京・多摩湖のほとりにある東大和市の一軒家で「一夫多妻生活」を送り、メディアで「ハーレムの館」、「ハーレム男」などと話題になった澁谷博仁被告(76)。10代の女性2人に自宅でわいせつな行為をしたとして、元妻の千秋被告(45)とともに準強制性交などの罪で起訴された。公判は東京地裁立川支部で進んでいたが、被告2人は昨年末から立て続けに自宅で亡くなった。今年1月20日に予定されていた判決言い渡し直前の出来事で、いずれも自殺だった。

 全国紙の社会部記者が語る。

「千秋被告は昨年12月23日に自殺をしました。博仁被告は1月19日深夜に救急隊が現場に駆けつけましたが、亡くなっています。これも自殺でした」

「制限住居」は自宅

 刑事裁判の対象となるわいせつ行為は2022年秋に起きた。

「占い師」を自称する博仁被告は自宅で、10代の女性にUFOの映像を見せ、「宇宙人に連れ去られて皮を剥いで食べられる。それが嫌なら私と関係を持つしかない」などと告げ、性交に及んだという。この女性は、同じショッピングモールのバイト先で働く千秋被告から「いい占い師がいる」と声を掛けられ、自宅に連れてこられたのだった。

 博仁被告は別の10代女性も自宅に呼び寄せて同じ手口を使ったが、別の女性は警察に駆け込んだために事件が発覚。23年2月上旬、博仁被告は、自宅に来た捜査員に催涙スプレーを吹き掛けるなどで抵抗し、公務執行妨害で現行犯逮捕された。その後、千秋被告も準強制性交幇助の容疑で逮捕され、博仁とともに起訴された。

 初公判は翌年7月に開かれ、両被告ともに否認。被告人質問や被害者への尋問が終わった後、まず千秋被告が保釈された。その後に博仁被告も保釈を認められたのだが、保釈中に裁判所が指定する生活場所「制限住居」をめぐって、裁判所と検察の間で一悶着起きていた。捜査関係者が明かす。

「千秋被告の『制限住居』は犯行現場の自宅だったんです。続いて博仁被告も保釈されましたが、検察は千秋被告と同じ自宅だけは止めてほしいと反対。ところが裁判所はまたしても自宅に指定したのです」

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