38万円スイートルーム飲み会に「国税が注目」…フジテレビに起きる深刻な事態を危機管理の専門家が予測

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失った切り札

「再生の扉は自分で開くものではなく、被害者はじめ視聴者、スポンサーが開いてくれるものです。フジにとっては再発防止策により二度と同じようなことが起きないという確信を与えること、これが重要なのです。具体的には、編成局と同じ立場で強い権力を持つ人権擁護局を作るとか、就業規則や芸能事務所との契約書に人権侵害排除項目を入れるなどです。それでも問題が微塵でも見られたら契約は解除、会社は直ちに刑事告発するとか、当事者と一緒に刑事告訴するのを原則とするなども決める。こういった再発防止策を打ち出さなければなりませんでした」(田中氏)

 これからではいけないのだろうか。

「再発防止策には、取締役の退任も大きな要素として含まれます。フジが生まれ変わったことをアピールできる切り札と言ってもいいでしょう。ところが、こちらはすでに3月27日に発表してしまいました。もはやフジには切り札がないのです」(田中氏)

 日枝取締役のことだろうか。

「日枝氏だけではありません。今回、第三者委員会は日枝氏について《会社の組織風土の醸成に与えた影響も大きい》としつつも、《ハラスメントに寛容な企業体質は、日枝氏だけでなく、会社の役職全員の日々の言動から形成されたもの》と指摘しています。ですから、報告書の後に取締役を一新するのが効果的でした」(田中氏)

 では、フジはどうしたらいいのだろう。

「今となっては清水社長や金光FMH社長が辞めるというのは、それほどインパクトはないでしょうね。強いて上げるなら、新たな経営トップにどんな人が就任するのかでメッセージを送ることはできるかもしれません。とにかく今回のようなことに徹底的に睨みを効かせられるような人を経営ボードに持ってくることです」(田中氏)

 そんな人がいるのだろうか。

「かつては京セラの稲盛和夫さんや元日弁連会長の中坊公平さんといったシンボリックな方がいましたが、近ごろはあまり思い浮かびませんね」(田中氏)

 このままではフジはどうなるのだろう。

国税も注目

「スポンサーが戻るタイミングを失ってしまいました。このままでは広告料が入らず、フジは少ない予算で番組を作るしかありません。当然、視聴率も落ち込み、ますます制作費は減らされるという負のスパイラルが待っています。そのためにも第三者委員会の報告書を読み込んで、解毒に徹すべきなのです」(田中氏)

 ちなみに、この報告書に注目しているのはフジやスポンサー、マスコミばかりではないという。

「報告書は全文がホームページで公開されていますから、国税庁も興味深く読み込んでいるのではないでしょうか。フジのB氏は都内のホテルのスイートルームを貸し切って行われた飲み会の利用料38万1365円を《番組のロケ等施設使用料》の名目で経費として立替申請し、会社から支払いを受けたとあります。スイートルームは実際にロケに使ったわけではありませんから、国税は会社が支払うべきお金ではないと判断し、横領と見なされる可能性もある。フジにとっては脱税の可能性だって出てくるでしょうから、悪質と見なされれば過去10年遡って審査されることも考えられます」(田中氏)

 さらに……。

「親会社FMHの株主が、日枝相談役や港前社長ら当時の同社経営陣15人に対し、233億円の損害賠償を求める株主代表訴訟を起こしています。裁判は第三者委員会の報告書も参考にしながら審議されるでしょうから、こちらも厳しい展開になるかもしれません」(田中氏)

 田中氏はこう付け加えた。

「いま企業は“ウェルビーイング”に取り組んでいます。フジのお粗末な危機管理は被害者や取引先、そして社員を苦しめ、国民にも深い失望感や不快感を与えています。一刻も早くウェルビーイングを意識した危機管理に切り替えていくべきです」(田中氏)

 6月には株主総会が行われる。

デイリー新潮編集部

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