元カレ、ガールズバーの客にもらったモノも… 文筆家・伊藤亜和がぬいぐるみと一緒に寝る理由
ぬいぐるみの邪魔にならないように……
noteに投稿した「パパと私」のエッセイが話題になり、その後『存在の耐えられない愛おしさ』『アワヨンベは大丈夫』などを刊行している文筆家の伊藤亜和さん。彼女は28歳になった今もぬいぐるみを抱いて眠るという。部屋に20以上並ぶぬいぐるみたち、それぞれに思い出すことがあり……
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28歳、いまだにぬいぐるみと寝ている。現在のスタメンは7体。おもちゃカゴのなかに控えている選手と合わせると、おそらく20体以上いると思う。これでもスタメンは減ったほうで、一時期は毎晩ベッドに10体以上のぬいぐるみを並べ、一体ずつ頭をなでておやすみを言い、肝心の自分はというと、ぬいぐるみたちに占領されたベッドの隅っこでぬいぐるみの邪魔にならないように小さくなって眠っていたこともあった。150センチほどの巨大なクマのぬいぐるみをベッドに置いたときはいよいよ自分のスペースがなくなってしまい、そこでようやく少しわれに返った。以来、ベッドの上は選抜メンバーということになった。
元カレ、ガールズバーの客……さまざまな人物にもらったぬいぐるみ
初めて買ってもらったのは、グレーのしましま模様の小さな猫のぬいぐるみ。家の近くのトイザらスで父にねだって買ってもらったものだ。父は怒らせるととても怖かったので、私は幼いながらいつも父に遠慮して過ごしていたが、そのぬいぐるみを見つけたときは、珍しく駄々をこねて買ってもらったことを覚えている。二十数年たち、ふんわりとした質感も今となってはすっかり消えうせてしまい、まるで雨に濡れた野良猫のようなみすぼらしいありさまになっているけれど、私にとっては今でも眠りを共にする大切なぬいぐるみである。
これまで自分のお金でぬいぐるみを買い求めたことはない。部屋にあるひとつひとつの顔を見れば「これはあのとき、あの人にもらったもの」という具合に難なく思い出すことができる。7歳の誕生日に近所の男の子からもらった抱き枕仕様のシナモロール、元カレが23歳の誕生日にくれた、彼によく似た秋田犬のぬいぐるみ。ガールズバーのちょっと苦手な常連さんがクレーンゲームで取ってきたシナモロール。こっちのシナモロールはプレミアム仕様の上質な手触りなので、眠るときは抱きかかえている。
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