「“違和感がある”ならなぜ公認したのか」 石破首相が杉田水脈を切れない理由を現役議員が明かす
「キーワードとなるのは“岩盤保守”」
杉尾氏が語る。
「正直、石破さんの答えにはびっくりしました。もう少し(杉田氏を)かばうのかなとも思っていたんですけど、そこまで言うのならなぜ公認したのか。言っていることと、やっていることが違います。ああ答えておきながら、実際には公認を取り消してもいないわけですから」
最終的な公認権者は自民党総裁の石破氏だ。その氏が「強烈な違和感」を持ちながら、杉田氏を公認せざるを得なかった理由について杉尾氏は、
「石破さんも答弁で言っていましたけど、いろいろ考えたのでしょう。比例票が何票くらい増えるだろう、とか」
と言う。先の政治部デスクが補足する。
「キーワードとなるのは“岩盤保守”です。杉田氏は、比例中国ブロックの上位で厚遇されるほど故・安倍晋三元首相の寵愛を受け、タカ派を喜ばせるような発言を度々してきました。そんな彼女の公認は、安倍政権を支えたものの現在では離れてしまった“岩盤保守”を取り戻すためでしょう。背に腹は代えられなかったということです」
この点、評論家の古谷経衡(つねひら)氏も、
「岩盤保守はいわゆる“安倍応援団”と言われていた人たちで、50代以上のミドルシニア層が中心。そうした層から支持を受ける杉田氏は、自民党の比例票や自民党員の獲得に役立つというわけです」
と指摘。
安倍政権下で岩盤保守が崩れなかった理由
元NHK解説主幹でジャーナリストの岩田明子氏は安倍元首相と岩盤保守の関係を次のように語る。
「第1次安倍政権後に右から3割の岩盤保守が不可欠だと気付いたのでしょう。第2次政権の安倍さんは常に岩盤保守を意識していました。“日本を守る”“経済を強くする”という軸はブレなかった。その一方で本来、岩盤保守が嫌うはずの政策も推し進めたのです」
岩田氏はその一例として、「戦後70年談話」を挙げる。
「安倍さんは戦後70年談話の発表を通じて、日韓関係の改善を図りました。一部の保守派からは村山談話の踏襲だと批判も受けましたが、談話に“あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません”という言葉を盛り込み、“頭を下げるのは自分たちの世代で最後だ”という考えをしっかり説明しました。だからこそ、岩盤保守は崩れなかったのです」
後編【「統一教会が問題になった際、自民党は逃げたから…」 自民の“岩盤保守”が崩れつつある理由とは】では、危険水域にある石破政権の今後と、自民党がこれまで大切にしてきた岩盤保守の支持が離れつつある問題について報じる。
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