尾崎亜美のアルバム曲「純情」が令和に海外で人気沸騰、昭和のヒット作で味わった“生みの苦しみ”や入院先での“身バレ”も懐古
この連載では、昭和から平成にかけて、たくさんの名曲を生み出してきたアーティストや関係者にインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で注目されている人気曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていく。
【写真】ご本人は「提供作のセルフカバーばかりでしょ」と言うけれど…実はそんなことない「尾崎亜美」人気曲ランキング
今回は、シンガーソングライター・尾崎亜美へのインタビュー第3弾。前回までは、他のアーティストへの提供作について語ってもらったが、後半戦では尾崎本人による歌唱曲を取り上げていく。尾崎自身は、「サブスクの人気曲は、提供作のセルフカバーばかりでしょ?(笑)」と謙遜していたが、Spotify再生回数ランキングの上位10曲中、セルフカバーは4曲。実際にはオリジナルのヒット曲のほうが多く、特に近年は海外での高評価が高まっている。
本人歌唱の最大人気曲「マイ・ピュア・レディ」は完成まで“ホテルに缶詰”だった
Spotifyでの人気曲第1位は、1977年に化粧品のCMソングとなってヒットした「マイ・ピュア・レディ」。当時、レコード売り上げがオリコン最高4位、累計23万枚以上を記録したが、令和のサブスクでも自身最大の人気を誇っている。
「自分のオリジナル曲もたくさん聴いてもらえているなんて、ありがたいです。この歌の舞台装置は、今となってはすごくアンティークですよね。公衆電話が世の中にいっぱいある時代で、電話BOXに入ってダイヤルを回したり、コインを入れたりって、若い人は分からないんじゃないかしら?」
その“装置”をうまく生かしているからこそ、初恋のドキドキ感が伝わってくる。化粧品タイアップの場合、サビ部分の歌詞をコピーライターなどの広告スタッフが指定することもしばしばあるようだが、本作ではどうだったのだろうか。
「先方からいただいた条件は、“マイ・ピュア・レディ”というタイトルだけでした。それで、口紅のCMソングに登場する“マイ・ピュア・レディ”ってどんな感じの人だろうと考えて、“あっ 気持ちが動いてる たった今 恋をしそう”っていうフレーズがひらめき、サビの部分に使いました。ですから、歌詞は私の発案です。
ただ、ここに行き着くまでが大変でした。最初の頃に提出した案はなかなかOKが出ず、やり直すことに。ホテルで缶詰め状態にされて、しまいには、“これでダメなら知らんぞ!”とヤケクソになっている時に浮かんできたのが、そのサビのフレーズとメロディーだったんです」
苦労して作った甲斐あって、’77年2月5日に発売された本作は、発売6週目にはオリコン4位にランクインし、そこから7週連続でTOP10入りのヒットとなった。当時、歌番組に引っ張りだこだったのかと思いきや、
「ちょうどその時、長期入院していたんです。東京と京都の往復生活で身体が弱っていて……。入院初期はまったくの無名だったのに、CMがテレビで大量に流れるようになり、先生や看護師さんも私が歌っていると気づき始めたんです(笑)。だんだんと、“サインをください”と頼まれることが増え、ヒットを実感しました。
ただ、当時のNHKでは旬のCMソングを歌うのが厳しかったので、退院後に呼ばれた時も、デビュー曲の「冥想」を歌っていました。だから、「マイ・ピュア・レディ」をテレビで披露したのは、数年後になってからですね。その代わり、当時いっぱいあった音楽誌にはたくさん取材していただきました」
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