六本木のラーメン店ではいまや「2000円の壁」が現実に…個人店を苦しめる「1000円の壁」問題は解消されるか

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一等地は「壁」を突破

 帝国データバンクによると2024年のラーメン店倒産件数は前年比3割増の72件で、これは過去最多だという。ラーメン店の経営をめぐっては「1000円の壁」が取り沙汰されることが多い。1杯1000円を超えることに客側の抵抗感があることを意味し、値上げしたくてもできない店の苦境が伝わる言葉である。だが最近、東京の人気店では「2000円の壁」も見えてきた。

 地方移住した筆者は東京にいる時の拠点は六本木だが、朝9時まで営業している某ラーメン店は、朝食に都合が良いため時々訪れる。魚介豚骨ラーメンや味噌ラーメン、あご出汁醤油ラーメンなど様々なスープを堪能できる店である。先日は「海老の濃厚魚介ラーメン」を食べたが、そのお値段1280円。すっかりこの価格にも慣れた。

 近くの人気店ではラーメン1390円、つけ麺1590円となっている。それ以外に、具なしラーメンの「かけ」は990円、具なしつけ麺の「もり」は1190円だ。最近、「具なしラーメンがブーム、麺とスープの味わいがよく分かる」という記事が話題となったが、結局、店の側が、最低価格が「1000円の壁」を超えないように新メニューを作ったということだろう。

 少なくとも東京では、一等地の人気店はとっくに1000円の壁を突破している。ちなみに、先ほどのラーメン店で「海老の濃厚魚介ラーメン」を食べた際、会計は計2060円だった。ラーメンが1280円で、トッピングのメンマが150円、瓶ビールが630円だ。純粋にラーメンだけならば1430円だが、この店は個室で宴会をしている人も多く、飲みたくなってしまう。

2000円の壁

 さらに、席待ちをしている時、レジで次々と客が会計をしているのを眺めていたが、若者が当たり前のように1800円ほどを支払っているのが印象的だった。まぁ、このご時世、ラーメン屋でもそれくらいの価格が適当なんだよな……という感慨に浸りつつ、一気に「2000円の壁」の心のハードルが下がったのだ。

 私の場合はビールを頼んだため2000円を超えたが、腹ペコの人であれば、ラーメンに白米(200円)と餃子(440円)もつけて1920円になる。トッピングを一つ乗せれば2070円だ。トッピングにしても、10年ほど前は煮卵が80~100円だったが、今や150円が普通となっている。この店もチャーシュー(280円)を除きすべて150円である。

 2000年代のラーメンは500~600円台が中心で、700円台だと割高に感じたものだ。1997年に一号店が登場し、2001年に会社が設立された「びっくりラーメン」は、ハンバーガー65円や牛丼280円のデフレ時代に、ラーメン1杯を180円で提供し、人々のド肝を抜いた。この時代がイレギュラーな金銭感覚だっただけなのだが、これを経験した人々が「1000円の壁」を感じるのは致し方ない。

 その一方で、「2000円の壁」がひたひたと迫っている状況にある。それは外国人観光客の存在も無縁ではないかもしれない。何しろ彼らの本国でラーメンは3000~5000円するのが当たり前なのだから、日本に来るとその安さを実感するのだ。最近多い「外国人が日本の料理のコスパに感激」のような記事を読むと、ラーメン店店主も外国人観光客をメインターゲットに絞り、2000円超のラーメンを提供することに躊躇しなくなるかもしれない。

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