「東京はアジアのセックス観光の首都」 中国人訪日客の増加でエイズ患者が急増? 「風俗店ツアーも流行」
梅毒は中国の「国民病」
医療現場の偏見もある。妊娠した女性が、HIV陽性者であることを理由に産院から締め出されるケースも多々あった。母子感染による胎児の先天性HIV感染が急増したことから、中国政府は2022年、「エイズ、梅毒とB型肝炎の母子感染撲滅のための行動計画」を採択している。
この計画からも分かるように、中国では、エイズと梅毒とエイズ関連疾病であるB型肝炎を統合して対策を立てている。梅毒は古くから中国の「国民病」だ。戦後一時鳴りを潜めたが、経済発展に伴い復活した。中国国家衛生健康委員会によると、中国の梅毒患者は16年に約44万人に達し、エイズと同時に対策を取っているが今も撲滅には程遠い。
売血で100万人がHIVに感染
中国政府が隠したがるエイズ・スキャンダルが発覚したのは01年のことだった。90年代半ば、「富める者から先に富め」というトウ小平の大号令の下、地方政府はどこも金儲けに奔走したが、貧しい河南省では農民たちに献血を呼びかけた。「献血」の実態は売血で、河南省政府の重要な収入源になった。河南省の58の行政区で、それぞれ平均2万人が「献血」し、河南省政府はそれを製薬会社に売った。血液・血漿を含む医薬品が飛ぶように売れ、「プラズマ経済」と呼ばれるほど大儲けした。だが、採血時に針を使い回した上、献血者の血液を混ぜ合わせた薬を投与した結果、HIVに感染した患者は推計で約100万人に上り、河南省の農村は「エイズ村」と呼ばれるほどになった。
当時、地元の婦人科医だった高耀潔女史が気付き、中国の保健当局に「エイズ報告」を行ったが黙殺された。河南省政府は高女史を黙らせようと彼女の活動を妨害し弾圧した。彼女はやむなくアメリカへ亡命、海外で中国のエイズ問題を発信し続け、03年、アジアのノーベル賞といわれる「マグサイサイ賞」を受賞した。中国のエイズ禍が世界で知られるようになったのはそのときからだ。
[2/5ページ]