「赤ベンツ不倫プラス詐欺」と「インサイダー取引」のどちらが社会復帰しやすいか

国内 社会

  • ブックマーク

TOB担当になって

 2日続けて「法曹関係者」に有罪判決が下された。3月26日、金融商品取引法違反のインサイダー取引の罪で在宅起訴された元裁判官の佐藤壮一郎被告(32)に言い渡されたのは懲役2年、執行猶予4年の判決。罰金100万円、没収金約480万円、そして追徴金約1020万円も加わっている。翌27日には秘書給与搾取による詐欺罪で広瀬めぐみ被告(58、元参院議員)に懲役2年、執行猶予5年の判決が下された。一般に名を広く知られたのは参議院議員時代の「赤ベンツ不倫」だが、彼女もまた法曹資格を持つ元弁護士である。2人とも執行猶予付きの有罪判決という点は共通しているが、未来の展望に関してはかなり違いが出そうなのだという。

 ***

 まずは佐藤被告の経歴をざっと見ておこう。慶応大法学部での優秀な成績が認められ、飛び級で同大法科大学院に入学し、2017年9月、24歳で司法試験に合格した。司法修習を終えた2019年に大阪地裁判事補に。民事事件を主として担当したが、C型肝炎などよく知られた国家賠償請求訴訟にも関わった。

10件のインサイダー取引

 将来を嘱望される若手裁判官に実務経験を積ませる目的で中央省庁や民間企業に出向させる制度をもとに、2024年4月に最高裁事務総局から金融庁へ出向し、企画市場局企業開示課の課長補佐として財務局に指導や助言を行う立場で、株式の公開買い付け(TOB)を予定する企業の書類審査なども担当した。

 TOBは実施する企業が買い付けのターゲットとする企業の株価に上乗せをして株主から買い集めることが基本で、ターゲット企業の株価はほぼ間違いなく上昇する。TOBを予定する企業は事前に財務局に書面を提出する必要がある。

「佐藤被告は出向前から株式投資を行っていましたが、TOB情報を事前に見られるようになってからは関連銘柄を売買して利益を出すようになりました。証券取引等監視委員会は一連の不審な動きを察知して調査を開始し、10件のインサイダー取引で告発、在宅起訴に至りました」

 と、社会部デスク。佐藤被告としてはあらかじめ出題される問題と解答を知ったうえで試験に臨んでいたようなものだろうか。本人名義での取引を通じて得た利益は約300万円で、含み益も合わせると計550万円ほどに膨らんでいたとされる。

裁判官に戻ることはできないが

 無職となった佐藤被告は裁判では起訴内容を認め、「両親や家族の将来のために余裕を持ちたかった」などと話した。26日の判決で懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円、没収金約480万円、そして追徴金約1020万円が言い渡された。

 佐藤被告は出向にあたって裁判官の身分から外れていたため、金融庁から懲戒免職処分を受けることとなった。裁判官ではないため裁判官の身分を解くか否かを判断する弾劾裁判の対象にはならないが、裁判官に戻ることはできない。では法曹資格についてはどうか。

「今回の判決で執行猶予付きとはいえ有罪判決が下がり、佐藤被告の言動から判決が確定するでしょう。そうなると執行猶予中は弁護士になることはできませんが、猶予期間が終われば弁護士になる資格は得られます。あとは所属を希望する弁護士会が認めるか否か。似たようなケースを知っていますが、だいたい執行猶予中はどこかの企業の顧問になるなどして執行猶予が明ければ弁護士会に登録申請を行い、何だかんだ言っても認められていますね。あくまでも本人が望めばではありますが、優秀だという評価があるなら顧問として、あるいは弁護士として使ってみたいと思う会社はあるのでしょう」(同)

次ページ:広瀬めぐみ元参院議員の場合は

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。