「娘の夜泣きで起こされた瞬間、あらすじが…」 医師で小説家の山口未桜に訪れた「生涯忘れられない瞬間」とは
書かせてもらった物語
書き始めのエピソードが強烈過ぎるからか、今でも『禁忌の子』は書かせてもらった物語だ、という意識が消えない。
本が好きだった子供時代。読んできた物語。ミステリーとの出会い。友人に誘われて文芸部に入ったこと。医師としての経験。結婚、出産。創作塾で教わったこと。わたしのこれまで。
人生はまるで樹形図のようだ。一つ一つを選び取って、毎日がつながって続いていく。
何かの選択が違った時、果たしてここでこうやってエッセイを書く未来は訪れていたんだろうか。
先が分からない中で進んできた人生の結果として、あの瞬間があって、物語が生まれたのだとしたら――午前4時のエウレカがあったのだとしたら――。
これだから人生は、運命は、やはり奥深くて面白い、と思う。
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