万病のもとになる「背骨の不調」の改善法 「背骨は最も老化しやすい」「猫背の人は“お相撲さん”の歩き方を」

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バンザイだけでも効果的

 これらのストレッチに加えて、背骨を支えるための筋トレも大切ですが、高齢者の場合、筋トレをすること自体、あるいは継続することが現実的には難しいというケースもあるでしょう。そういう方は、まずは「バンザイ(万歳)」の姿勢がお勧めです。

 簡単な動作と思われるかもしれませんが、日常生活でバンザイ、つまり腕を真上に高く上げる姿勢を取ることは意外とありません。バンザイの姿勢を保つだけでも、肩から背中の筋肉が鍛えられます。実際にバンザイの姿勢を30秒間続けてみると、「かなりつらい」と言う方が少なくありません。そのつらさは、筋肉が鍛えられている証しでもあるのです。

 中には、バンザイすら面倒という方もいるかもしれません。そういう方でも、どうか諦めないでください。筋トレは、あくまで筋合成のきっかけに過ぎません。そして、取り立てて筋トレをしなくても、筋肉のもととなるタンパク質を適切に摂取していれば、筋肉は分解されるよりも合成されるほうが上回る方向に進んでいくのです。

 70代で体重60キ ログラムの方だとすれば、1回の食事で24グラムのタンパク質を摂取するのが基準です。目安としては、肉100グラムに20グラムのタンパク質が含まれていると考えてください。

家事や通勤も立派な「運動」

 もちろん、いくら筋トレしなくていいといっても、寝たきりでは筋肉は合成されません。日常の生活の中で、しっかりと動くことが不可欠です。掃除、料理、洗濯、通勤……。日々の暮らしの中でズボラをせず、こまめに動く。これも立派な「運動」です。

 そしてその運動の刺激によって、「椎間板の健康→背骨の健康→全身の健康」という良い流れが生み出されていく。ねたままストレッチやバンザイを取り入れて「脱・猫背」を図り、背筋を伸ばすことが、健康寿命を延ばす第一歩ともなるのです。

山口正貴(やまぐちまさたか)
東大病院リハビリテーション部理学療法士。1980年生まれ。2005年に理学療法士免許を取得し、東京大学医学部附属病院に入職。現在も同院リハビリテーション部に理学療法士として勤務。日本理学療法士学会第8回優秀論文表彰で優秀賞を受賞。NHK「ガッテン!」などの出演歴がある。著書に『背骨の医学』『姿勢の本』など。

週刊新潮 2025年3月27日号掲載

特別読物「逆流性食道炎、膝痛、腰痛… 万病のもと『背骨の不調』改善法」より

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