万病のもとになる「背骨の不調」の改善法 「背骨は最も老化しやすい」「猫背の人は“お相撲さん”の歩き方を」

ドクター新潮 ライフ

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 スマホやパソコンに夢中になっていると、つい猫背になってしまう。現代人の悩みの一つだが、放っておくと体全体に不調をもたらすという。姿勢を支える「背骨」が「健康寿命」にいかに影響を及ぼすか。そのメカニズムを東大病院の理学療法士・山口正貴氏が徹底解説。

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 腰がだるい、膝が痛い、五十肩でしんどい、はたまた逆流性食道炎に悩まされている……。

 体にさまざまな不調を抱え、治療に励む。その際、膝痛の方は膝、五十肩の方は肩にアプローチして不具合を治そうとする。当たり前の話に思えますが、実はそれだけでは“対症療法”に過ぎず、短期的に症状が治まったとしても、時間がたつとぶり返してしまうケースが少なくありません。なぜなら、いま紹介した症状は全て、根本的な原因が体の別の部位に存在する場合があるからです。

 腰痛にしろ、膝痛にしろ、根本的な問題は「姿勢」にあることが珍しくありません。逆流性食道炎に関しても、猫背によって内臓が圧迫されているために引き起こされている可能性があります。したがって姿勢、つまりは背骨の健康を保つことこそが全身の健康につながるといえるのです。

 病院で診てもらい、肩や腰などに大きな異常が見つからないのに痛みが続く。そういった原因不明の不調、その“真犯人”は背骨かもしれないのです。

〈こう解説するのは、東京大学医学部附属病院リハビリテーション部の山口正貴氏だ。

 理学療法士として医療現場の最前線に立ち続けている山口氏は、『背骨の医学』や『姿勢の本』といった書籍を上梓し、健康長寿における背骨の重要性を説いてきた。

 背骨が大事であることは何となく分かっていたとしても、背骨が具体的にどれだけ私たちの健康寿命に影響を与えているかまで理解できている人はそう多くあるまい。

 山口氏は言う。背骨こそがその人の健康を支える“屋台骨”である、と。〉

健康寿命の延伸を邪魔するものとは

 健康寿命を延ばしたいのであれば、その阻害要因を遠ざけるのが一番の近道であることは自明の理です。では、健康寿命の延伸を邪魔しているものとは果たして何なのでしょうか。

 厚生労働省が発表している調査概況によると、介護保険における要支援の原因の約半数は、加齢による骨や関節、筋肉の問題が占めています。実際、変形性腰椎症は3790万人、変形性膝関節症は2530万人、骨粗鬆症は1240万人いると推計され、骨や関節に問題を抱えている方はとても多い。そう考えると、健康寿命を延ばすためには、骨や関節、筋肉の健康を保つことが最も手っ取り早い手段といえます。一体どうすれば、「体全体」の骨や関節などの健康を守れるのでしょうか。

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