「株主総会で糾弾の対象になるのは嫌」フジ・日枝氏退任の真相 新体制は「日枝色」払拭が鮮明

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日枝体制は限界

 視聴率とCM売上高はほぼ比例する。いつの時代も民放の業績は視聴率で決まる。フジの業績を押し上げた日枝氏は社内で英雄だった。

 ところが、2010年代半ばから雲行きが怪しくなった。2016年度以降、世帯視聴率が4位に。規模が違うテレビ東京を除くと、最下位になってしまった。2020年度からは基準が個人視聴率に移行したが、やはり4位が続いている。

 このため、フジ内は「ボーナスが半分になった」「制作費が安い」といった暗い話が多い。昨年度の制作費は日テレ約893億円、テレ朝約791億円、TBS約937億円、フジ約682億円だった。

 CM売上高も4位なので、株主の不満が絶対権力者の日枝氏に向いていた。日枝氏の威光が衰えていた。

 視聴率の低下はフジ経営陣の高齢化と日枝氏による恣意的と見られる人事が問題視され始めた時期とピッタリ重なる。

 2017年に就任した10代目社長・宮内正喜氏(81)は系列の岡山放送とBSフジの社長を経て本体に戻った。異例の人事だった。

 日枝氏は東京生まれだが、実家は岡山の旧家。このため、なにかと岡山と縁がある。

「だから側近だった宮内氏を岡山放送の社長に据え、のちに自分も同局の取締役相談役に就いたとされている」(同・フジ関係者)

 中居氏問題の対処を誤ったとされる港浩一前社長(72)の人事も日枝氏の情実が交じっていたというのが局内のもっぱらの見方だ。

「社屋が新宿区河田町にあった1980年代前半、編成局長の日枝氏はバラエティをつくる第2制作部の1部員に過ぎなかった港氏によく声を掛けていた。当時は編成も制作も同じ大部屋で仕事をしていましたから。同じ早稲田大卒だからということもあったのでしょう」(別のフジ関係者)

 港氏は2015年、制作子会社の共同テレビジョン社長に転出した。本体から出た理由の1つは常務だった2013年、役員としての担当番組「ほこ×たて」の演出が、放送倫理・番組向上機構(BPO)から「重大な放送倫理違反があった」と指摘されたためだった。

 共同テレビ社長は、敏腕ドラマ制作者で吉永小百合(80)の夫だった故・岡田太郎さんらが務めた有力ポストだが、同社67年の歴史の中で本体に戻って社長になった人はいない。日枝氏が港氏を特別視していたことがうかがえる。

 仮に日枝氏が職にとどまっていたら、株主総会で港氏の事実上の任命責任まで問われた可能性がある。やはり日枝氏の再任は難しかった。

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