「株主総会で糾弾の対象になるのは嫌」フジ・日枝氏退任の真相 新体制は「日枝色」払拭が鮮明

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日枝氏退任の真相

 中居正広氏(52)と女性とのトラブルに端を発するフジテレビの問題に絡み、日枝久氏(87)がフジと親会社のフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の取締役相談役を退任する。一方、FMHの株主が、同社の現旧経営陣15人に233億円の賠償を求める株主代表訴訟を東京地裁に起こした。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 中居氏と女性のトラブルではフジの企業としてのガバナンス(統治)不全が露呈した。

 一方でスポンサーによるCMの引き上げによって、2025年3月期のCM収入は予想より233億円も少ない1252億円になる見通し。前年同期は約1473億円なので激減だ。かつては企業力が拮抗していた日本テレビは同約2192億円なので、大差を付けられた。

 しかし、日枝氏はこれらの問題に直接的には関わっていない。どうして退任するのか。

 3月27日に記者会見したFMHの金光修社長(70)とフジの清水賢治社長(64)によると、退任は本人の意向。

「辞任すると私に伝えてきた」(金光氏)。

 一方で日枝氏をよく知るフジ関係者は「体力、気力ともに減退したということ」と語る。日枝氏は2月下旬に東京都杉並区内の自宅内で転倒し、腰椎を圧迫骨折。その後の両社の取締役会を欠席していた。現在も入院している。

 6月の株主総会で日枝氏の再任は難しいことも退任に影響したと見られている。FMH株を7%以上持つ米国の投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」は2月上旬、日枝氏の辞任を求める書簡を同社に送っている。

 約5%のFMH株を保有する国内資産運用会社「レオス・キャピタルワークス(レオス社)」の藤野英人社長(58)もFMHの問題点として経営陣が高齢であることを挙げていた。日枝氏再任で株主総会を乗り切るのは難しい情勢だった。

 日枝氏は1988年にフジの6代目社長になってから37年。2001年に社長を退任したが、以降も局長以上の任命権を握り、会社を完全に支配してきた。「いまさら株主総会で糾弾の対象になるのは嫌だっただろう」(同・フジ関係者)

 中居氏絡みの問題を除いても日枝氏は崖っぷちに立たされていた。オーナー経営者ではない日枝氏が絶対権力者になれたのは1982年から1993年、そして2004年から2010年に視聴率3冠王を達成できたから。

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