28年前の開幕戦で起きた奇跡!前年1安打だった「リストラ選手」が巨人のエースから放った“驚異の3打席連続弾”

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「お前は器用か?不器用か?」

 はたして、ヤクルトからすぐに「OK」の返事が届き、移籍が決まる。野村監督も「おう、よう来たのう」と温かく迎え、「お前は器用か?不器用か?」と尋ねた。

「不器用だと思う」と答えると、野村監督は「ワシの見る限り、器用なやり方をしている。相手のことはもちろん、自分のことも分析しなさい」と指摘し、「球を絞って打ったらどうか。そのほうがヒットの確率も上がるし、長打も出る」とアドバイスした。

 さらに翌1997年のオープン戦が始まったころ、野村監督は暗示にかけるように言った。

「お前はな、大学に入ったときも(1年春に4番打者としてベストナイン受賞)、プロに入ったときも(打率.280、16本塁打で新人王)、1年目はいい年になったから、ヤクルトに移った1年目も、絶対活躍できる」。
 
 春季キャンプで好調時の打撃の感覚を取り戻した直後だけに、素直に耳に入り、その気になった。

 そして、4月4日の開幕戦、巨人戦、小早川は5番ファーストで出場した。巨人の先発は、前人未到の4年連続開幕戦完封勝利を狙う“平成の大エース”斎藤雅樹だった。

 ヤクルトは斎藤を苦手としており、前年は7試合で0勝6敗とカモにされていた。これに対し、小早川は広島時代の斎藤との対戦成績は通算打率.314、4本塁打と相性が良かった。“打倒長嶋巨人”に燃える野村監督が小早川を獲得したのも、このデータを重視したからかもしれない。

野村監督の言葉を思い出し、迷うことなく一振

 球史に残る開幕戦のドラマが幕を開けたのは、0対0の2回だった。「ファーストストライクから積極的に打っていこう」と考えた小早川は、斎藤の初球、真ん中外寄りの直球をフルスイング。打球はバックスクリーン右に突き刺さる先制ソロとなった。

 松井秀喜の2ランで逆転された直後の4回にも、「斎藤はワンスリーになると、決まってカーブを投げてくる」という野村監督の言葉を思い出し、カウント3-1からの5球目、内角高めカーブを迷うことなく一振し、右翼席中段に同点ソロを放つ。

 さらに6回、4番・稲葉篤紀のソロで3対2と勝ち越した直後の3打席目にも、斎藤の内角低めシンカーをすくい上げ、自身初の3打席連続本塁打を達成した。

 前年たったの1安打に終わった35歳のベテランが、シーズン最初の試合でいきなり3本塁打を記録しようとは、誰が予想しただろうか。斎藤も「今日の小早川さんには何を投げても打たれる気がした」と脱帽した。

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