「親の十四光り」は間違い? Koki,の演技への意外な高評価と、「キムタク超え」の可能性

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年末は父娘共演の授賞式なるか? 父・キムタクは日アカ優秀主演男優賞辞退の過去も

 個人的な感想では、Koki,さんの演技が未熟とは思わなかった。コミカルなやりとりも難なくこなし、のびやかでかわいらしいヒロインを好演していた。戸惑う時はまばたきが増えるとか、本音を押し隠すシーンではよく下唇をかむとか、ステレオタイプな表情の作り方が多いといえなくもないが、それはアップが多いから目立ってしまうだけのこと。映画レビューサイトを見ても、Koki,さんの演技はなかなか好評のようである。

 なおKoki,さんの次の出演作はイギリスのスリラー映画で、またも主演。昨年のエミー賞で注目を浴びた「SHOGUN 将軍」にも出演していた平岳大さんと共演するという。Koki,さんはバイリンガルという武器があるだけに、「SHOGUN 将軍」ブームの流れに乗れる最有力若手女優と踏んでいる業界関係者は少なくないに違いない。

 さて、日アカの話に戻ろう。大手配給会社の出来レースと見る向きは強いが、外国での評価は確実に加味されている。歴代の受賞作品を振り返れば、「ゴジラ-1.0」や「ドライブ・マイ・カー」、「万引き家族」などは本家アカデミー賞やカンヌ国際映画祭などでの受賞が先に発表されていた。こうした観点から見れば、外国の複数作品で主演を務めるKoki,さんが、主演賞は早いとしても、新人女優賞のノミネートは当然想定できる。

 ちなみに父である木村拓哉さんは、巨匠・山田洋次監督の「武士の一分」(2006)の主演を務めながらも、日アカの優秀主演男優賞を辞退したという過去がある。当時の同部門ノミネートは渡辺謙さんに役所広司さん、寺尾聰さん、妻夫木聡さん、オダギリジョーさんと強者ぞろい。結果は渡辺さんが受賞したが、「負け戦を見越したジャニーズ事務所がキムタクの名誉のために撤退した」といううわさはネットを中心に駆け巡った。

 それ以降、木村さんが目立った映画賞を受賞したことは少ない。興行収入38.1億を記録した「マスカレード・ナイト」(2021)で報知映画賞主演男優賞を受賞したものの、その翌々年の「レジェンド&バタフライ」では受賞なし。昨年末に公開された主演映画「グランメゾン・パリ」は興行収入40億を突破しているが、2025年度の賞レースにどこまで食い込めるかは未知数だ。

 主演ばかりという点では父娘は同じだが、Koki,さんはホラー、ヒューマンドラマ、ラブコメ、スリラーと主演作ごとに役柄を変えようとしている。もしかするとそれは、型破りなヒーローばかり演じて「何をやってもキムタク」と批判され、賞と縁遠くなってしまった父の轍を踏まないようにしているのかもしれない。

 それでも、木村さんへの注目度は令和の今も高いことは事実。父とはそこまで強いパイプは作れなかったものの、Koki,さんという金の卵との縁ができた日テレが、たった一作の映画で手放すとも思えない。来年の日アカ授賞式で父娘初のW受賞も織り込み済みかしら、と考える性格の悪い私に、工藤静香さん、どうか「女神」の爪の垢を煎じた創作料理を作ってもらえないだろうか。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部

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