最終回を迎えた「おむすび」をプロが総括 「学びや考察がない」「ヒロインへの敬愛を感じなかった」
対策も打たなかった
《「『入れたくて入れただろう』と言われれば、その通りなんです。そのあたりも、ツッコミを入れていただきつつ楽しんでいただければと。私と脚本家の根本ノンジさんは朝ドラが大好きなんです。その朝ドラへのラブレターみたいなもの、と言いましょうか。私たちが朝ドラを作るならば、当然お約束は入れるでしょうと。『そうなるんだったらもう、いちばん最初に見てもらおうじゃないか』という思いが裏側にはありました」》(Lmaga.jp:2024年9月30日配信)
「甘いですよ。視聴者はあれでいっぺんにシラケてしまい、見る気をなくした人も少なくなかったと思います。初回視聴率16・8%でスタートした『おむすび』は、最初の週平均は16・1%でしたが、2週目は14・7%、3週目は13・5%、4週目は12・9%と坂道を転げ落ちるように視聴者を失っていきました」
ちなみに、先週(24週)の平均は11・8%と過去最低である。
「普通のプロデューサーやディレクターなら、この有様を見て何とかしようと悪あがきでもいいから対策を打つはずです。ところが、その気配すら感じられませんでした。ウラ番組の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)にすら負けて屈辱と思わないのか不思議です」
昨年末の「紅白」で主題歌「イルミネーション」に加えサプライズで「LOVE PHANTOM」と「ultra soul」も披露したB'zが大いに盛り上げたが、それも追い風にすることはできなかった。
「あんぱん」にも悪影響
「ご存知の通り朝ドラはシニア層の継続視聴者が多い。ですから、戦前から戦中をまたいで戦後が描かれ、主人公のモデルは馴染みのある人や偉人がほとんどです。2010年度前期から現在の朝8時ちょうどからの放送になり、その初回、漫画家の水木しげる夫妻を描いた『ゲゲゲの女房』がまさにそのような内容でした。近年も『まんぷく』(18年度後期)、『なつぞら』(19年度前期)、『エール』(20年度前期)、『おちょやん』(20年度前期)、『カムカムエヴリバディ』(21年度後期)、『虎に翼』(24年度前期)と、数字の取れた作品はこの法則に従っています。『あまちゃん』や『半分、青い』(18年度前期)のような例外もありますが、〈学び〉〈考察〉〈主人公への敬愛〉があることは共通しています。朝ドラにはそれらがないと駄目なんです」
平成元年生まれのヒロインがギャルを経て栄養士となるのが「おむすび」だ。
「ギャルの生態や奮闘ぶりを見せつけられても学びも共感もありません。見るだけ時間の無駄と思われても仕方ありません。阪神・淡路大震災の避難所でもらった“おむすび”が伏線になっていることが分かったとき、少しは数字を戻せるかなとも思いましたが、あっという間に通り過ぎてしまいました。ラス前の週はコロナ禍の話なので誰も思い出したくないでしょうし、朝から見たくもない。祖父の死だって、グッとくるはずのところをわざわざ逃しています」
3月31日からは「あんぱん」がスタートとする。モデルは「アンパンマン」の生みの親であるやなせたかし夫妻で、時代は戦前・戦中・戦後、誰もが知っている人物だ。
「ただし、油断は禁物です。『おむすび』の低視聴率により、NHKの朝ドラを時計代わりに点けておく視聴習慣は失われました。さらに、同じく31日からフジテレビは『めざましテレビ』を8時14分まで放送を延長し、朝ドラに戦いを挑むつもりです」
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