米国「女子ゴルフ人気凋落」を招いた“スロープレー”がついに厳罰化 過去には不可抗力で罰打を受けた「有名日本人選手」も

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基本は1打に「最大40秒」

 最近、人気を回復し始めている米LPGAは、今こそプレーペースを改善して見ごたえある戦いを披露し、かつてのような賑わいを取り戻そうと考えている。

 本来はハーフ2時間以内、1ラウンド4時間以内で回るのが理想とされている。だが、高額賞金やポイント、シード権など多くのものをかけて戦うプロゴルフの世界では、男女とも、このペースがなかなか守られず、1ラウンドが5時間を超えるケースもしばしば見られる。

 米LPGAはそんな現状に業を煮やし、今年2月、ファウンダーズカップ(2月6日~9日、米フロリダ州ブラデントンCC)の開幕前に開かれた選手ミーティングの際、米LPGA独自のスロープレー厳罰化策となる新ルールを発表した。

 プレーペースに関しては、USGAとR&Aが制定したルールが世界共通として推奨されている。それによれば、1人のゴルファーが1打にかけることが許される時間は「最大40秒」。これを上回った場合、1回目の違反は警告のみだが、2回目は1罰打、3回目は2罰打、4回目は失格とされている。

 しかし、米LPGAが新たに打ち出した独自ルールでは、規定の40秒を1~5秒オーバーした場合は罰金、6~15秒オーバーは1罰打、16秒以上オーバーは2罰打と規定された。オーバーした秒数に応じてペナルティが細かく規定され、しかも、きわめて短い秒数で設定されているところが目新しい。

 また、従来のルールでティショットを最初に打つプレーヤーなどに許容されている「追加の10秒」の一部が撤廃されるなど「時短」も盛り込まれている(1オン可能なパー4とパー3のティショットを最初に打つプレーヤーには、従来通り「追加の10秒」を維持)。

 世界ランキング1位のネリー・コルダも「私たちはゴルフで人々を楽しませるのが仕事です。プレーがスローすぎたら、人々を楽しませることはできず、エンタテインメントではなくなってしまう」と語り、米LPGAがスロープレーの取り締まりを強化し始めたことに拍手を送った。

 この新ルールは3月27日から開催されるフォード選手権より発効される予定である。

PGAツアーが見せた大きな変化

 米LPGAの積極的な姿勢に刺激を受けたのか、PGAツアーも3月のプレーヤーズ選手権の開幕前に「今後はスロープレーに対して罰打を科す。選手1人1人のプレーペースに関するデータも公表する。まずは試験的に4月14日からコーンフェリーツアーとPGAツアー・アメリカスでスロープレーに罰打を科す」と発表した。

 1人1人のデータを公表することは、スロープレーヤーの氏名を公にすることを意味している。これまで罰金対象者の名前すら明かされなかったことを考えれば、これはPGAツアーが見せた大きな変化と言うことができる。

 そして、同じ3月に米LPGAは、さらなるスロープレー撲滅強化策としてこんな規定も発表した。

 それは、スロープレーと見なされて計測されたホールが通算40ホール以上となった選手に罰金を科すという新ルール。全米女子オープンや全英女子オープンなど、いくつかの試合は例外とされるそうだが、それ以外の大半の試合は、この規定の対象となる。

 さらに、下部ツアーのエプソンツアーでは、計測されたホールが通算20ホール以上で罰金が科されることになり、厳罰化に拍車がかかりつつある。

 計測ホールが通算40ホール(下部ツアーは20ホール)で罰金という新ルールは妥当なのかどうか。ちなみに、選手会長のビッキー・ゲッツ・アッカーマンは「さまざまなデータを見れば、40ホール以上でタイムを計られた選手は、明らかに全体のプレーペースをスローにしている」と頷いている。他の選手たちからも、新ルールに対する批判や不満は今のところは聞かれていない。

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