米国「女子ゴルフ人気凋落」を招いた“スロープレー”がついに厳罰化 過去には不可抗力で罰打を受けた「有名日本人選手」も

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「女子のゴルフは遅すぎて眠くなる」

 日本では昨今、男子ゴルフより女子ゴルフのほうが高い人気を誇っている。米国はどうかと言えば、1980年代から90年代の前半ぐらいまでの女子ゴルフは、今の日本の女子ゴルフのような華やぎを見せていた。

 樋口久子、岡本綾子、小林浩美といった日本人選手が大志を抱いて挑んだ当時の米LPGAには、ベッツィ・キングやジュリー・インクスターをはじめとする米国出身のスター選手が大勢ひしめいていた。しかし、90年代終盤ごろから女子ゴルフ人気は下降線をたどり始め、メジャー大会でもギャラリーはまばらということが珍しくなくなっていった。

 人気低迷の原因は1つではなかったが、最大の理由は、韓国やタイといったアジア出身選手が大挙して米LPGAにやってきて席捲したこと。強豪選手の多くが外国人選手となり、米国のファンはどんどん離れていった。

 そして、ファン離れをさらに加速させていったのが、女子選手たちに顕著に見られたスロープレーだった。

 当時の女子選手たちは、ショットに入る前に距離やクラブ選択を相棒キャディと延々相談。ようやくアドレスに入ると、今度はキャディが後方に立って方向を確認。そして、キャディがライン上から外れるのを待ってから、選手はさらにプレショットルーティンを行い、それからようやくショットしていた。

 こうしたプロセスを大半の選手が行っていたために、1ラウンドの所要時間はどんどん長くなり、5時間を超え、5時間半を超え、6時間に迫ったこともあった。

「女子のゴルフは遅すぎて眠くなる」「見ていると、あくびが出る」「かったるい」――。そんな声が聞かれるようになり、米国の女子ゴルフ人気は低下していった。

PGAツアーは「スロープレーに甘すぎる」との批判

 一方、当時の米国の男子ゴルフは、PGAツアーでもプレーペースがスローになることは珍しくなく、悪天候でもないのに日没サスペンデッドになることもしばしばだった。

 しかし、タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンといったビッグスターが活躍していた当時のPGAツアーでは、派手でエキサイティングなプレーが多々見られた。そのせいか、たとえ進行がスローでも眠くなることはなく、男子ゴルフがスローだという印象はあまり受けなかったように思う。

 ところが昨今、故障続きのウッズは活躍が見られなくなり、スター選手の多くがリブゴルフへ移籍したこともあって顔ぶれがすっかり淋しくなると、スロープレーぶりが目立ち始めている。

 米メディアやゴルフ解説者からは「PGAツアーはスロープレーをもっと厳しく取り締まるべきだ」「プレーペースを改善すべきだ」と、たびたび指摘されている。

 もちろん、PGAツアーがスロープレー対策を何もしていないわけではない。ルール・オフィシャルがプレーを監視し、スロープレーを発見したら、規定に従って計測し、警告し、罰金も科している。

 しかし、罰打を科した例は皆無に近く、これまで確認されている中では、1995年のグレン・デイが、PGAツアーで唯一、スロープレーで罰打を科されたケースだと言われている。

 高額賞金を稼ぐ選手にとって罰金は大したダメージではないが、スコアや順位、ポイントなどに直接響く罰打のダメージは甚大。だからこそ「PGAツアーは選手に忖度して罰打を科さない」「スロープレーに甘すぎる」という批判が高まりつつある。

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