尾崎亜美が昭和アイドルのなかでも岡田有希子と河合奈保子を大絶賛する“納得の理由” 松本伊代の「可愛すぎる」突撃エピソードも明かす
この連載では、昭和から平成にかけて、たくさんの名曲を生み出してきたアーティストや関係者にインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で注目されている人気曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていく。
今回フィーチャーするのは、3月でデビュー50年目を迎えた尾崎亜美。インタビュー第1弾は、杏里「オリビアを聴きながら」や松田聖子「天使のウィンク」「ボーイの季節」、岡田有希子「Summer Beach」など、Spotifyでの再生回数ランキング上位4曲にまつわるエピソードを伺った。第2弾では、まず岡田有希子に提供したもう1曲のシングル「二人だけのセレモニー」(Spotify第6位)について語ってもらおう。
岡田有希子なら「転調しても大丈夫」と難易度の高い曲を提供した
「二人だけのセレモニー」(作詞:夏目純/作曲:尾崎亜美)は、卒業式のあと、恋人と二人だけで“セレモニー”を迎えるという春らしいアップテンポの楽曲だが、本作も「Summer Beach」も、曲中で何度も転調する。岡田有希子は楽しそうに歌っているが、実際に歌ってみると一筋縄ではいかないのだ。
「私は、ちょっと変わったことをしたくて、“実験”をする気分で曲を作っているんですよ。転調も、素敵だと思うから入れてみるものの、やっぱり転調すると場面がバーンと変わるじゃないですか。だから、歌い手によっては複雑にしない場合もあります。でも、“作家のカン”っていうのかな、“有希子ちゃんなら大丈夫だ”と感じて、難しくても提供したんだと思います。それに、転調があることを喜んでくれる歌い手さんも多いんですよ」
本作で作詞を手がけた夏目純は、この後、中西保志「最後の雨」などJ-POPシーンでも活躍している。
「純は私のラジオのリスナーで、言葉のセンスが面白いので、早く作詞家デビューさせたいなと思っていました。有希子ちゃんだったら、純の詞が合うなと感じたこともあり、依頼したのでしょうね。純のほうが、大人の恋愛を私よりも積極的に書けるので」
Spotify第5位には、高橋真梨子「あなたの空を翔びたい」がランクイン。本作の作詞が尾崎亜美と藤村渉(当時の西武グループの会長 堤清二のペンネーム)との共作名義となっているのは、当初、尾崎が書いていた“Slip Away”という出だしの歌詞を“Kiss Again”に変更されたためだ。
「西武グループのイメージソングに起用していただいたんですが、その社長さんがどうしても、“Slip Away”という節を変えたかったそうなんです。真梨子ちゃんから聞いたのですが、“Slip Away”=“スリッパウェイ”=“スリッパの道”みたいなイメージを抱かれたらしく、“Kiss Again”に変わりました。
当初“Slip Away(こっそり去る)”にしたかったのは、ちょっとしたすれ違いや、素直になれなかった自分のせいで彼の心が離れてしまって“Slip Away”する主人公の気持ちを描きたかったからです。けれど、“Slip Away”だと、意味が伝わらない人もいるじゃないですか。でも、能動的なイメージのある“Kiss Again”であれば、文法的には正しくないとしても、ちゃんと伝わる。それをこの歌で学んでから、“たとえ英語はおかしくても、伝わればオッケー!”みたいな歌詞をいっぱい作りました(笑)。
“Kiss Again”に変わったことによって、よりエモーショナルな感じも出ましたし、結果として変えてもらって良かったなと思っています。ただ、“Slip Away”というフレーズが頭の中にずっと残っていたので、杏里に提供した『スリップ アウェイ』で使いました」
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