「灘」「桜蔭」で東大合格者が減少している“意外な理由” 「最近では、東大に受かりたいというよりは…」

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「東大に受かりたいというよりは…」

 今年も「高校別東大合格ランキング」が発表された。雑誌のAERAとサンデー毎日、出版社の大学通信が合同で行った集計によると、1位は今年も開成高校(149人)。以下、神奈川の聖光学院、麻布と続くのだが、気になるのは、年々合格者数を減らしている名門高校があることだ。何か異変が生じたのだろうか。

 例えば兵庫の灘高校。長らく開成、筑波大学附属駒場とトップ3を形成してきた同校が、今年は合格者77人で5位。去年より9人も減らしている。2019年(74人で6位)以来のポジションだ。

 そこで、同校の進路指導担当者に聞いてみると、

「最近では、東大に受かりたいというより、医学部など具体的な職業を考えての進路を選ぶ生徒が多いのです。当校も“どこそこの大学を目指しなさい”という指導はしていません。あくまで生徒自身が目指す将来像を尊重して、その上で、受験する学校を決めてもらっています」

 森上教育研究所の森上展安氏が言うのだ。

「灘高校の場合、東大全体の合格者数は、あまり意味がない。同校の本当の実力を示しているのは、東大理科III類(ほとんどの学生が医学部へ進学)に何人受かったかです。それによると今年は昨年より2人多い9人。依然として、受験界のピラミッドの頂点にいる学校だといえます」

桜蔭は2022年から右肩下がり

 女優の菊川怜が卒業した女子高の名門・桜蔭高校も大きく減らしている(51人)。心配なのは22年から右肩下がりなことだ。

 同校は、

「生徒の進路についてお話しすることはありません 」

 と言うのだが、前出の森上氏の解説。

「しばらく前からなのですが、女子生徒が同じレベルの学校に受かると共学校を選ぶ傾向にあります。最近、その受け皿になっているのが都立日比谷や渋谷教育学園幕張。両校とも今年は大きく東大合格者数を伸ばしています」

 また、今年の東大入試は数学で差がつきにくく、数学教育に力を入れる私学にとって不利だったとも。トップ10の常連だった駒場東邦高校も2年連続でランキング外(39人)だ。

「東大入試は、合否ラインの数点の間に何十人も集中する厳しい試験です。加えて学年間で実力差がありまして、今年は前年ほどではなかったということでしょう」(同校の進路指導担当者)

 東大受験は、隙を見せると、あっという間にランク外にはじき出されて、人の口の端に上るほど、高校にとっても厳しいのである。

週刊新潮 2025年3月27日号掲載

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