「えっ、9000円もするの?」 家族3人の外食で“想定外のお会計”に目がテン…“待望のインフレ”が日本を貧しくする理由とは
物価高を放置する政府
日銀の植田和男総裁は2月4日、衆院予算委員会で「現在はインフレの状態」と断言した。今年の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数で1月は3・2%、2月は3・0%となり、今後も3%台の物価上昇が続くと予想されている。アベノミクスで2・0%のインフレターゲットが達成できなかった時代を考えると、まさに隔世の感だ。
「生鮮食品を除いてもインフレで、これに食品の価格上昇も国民の生活を圧迫しているわけです。多くの人が物価高に悩まされているのは当然でしょう。問題なのはコメやガソリン代の高騰は政府が適切な施策を行えば価格を下げられる点です。食品なら消費税減税、ガソリンなら暫定税率を廃止すればいい。ガソリンなんて4割が税金です。ところが政府は物価高を放置し、なおかつ税金や社会保障費の負担は増やそうとしているわけです。こうなると今の生活苦は人災と言っていいでしょう。こうした背景を持つ物価高を、単純にインフレと表現していいのか疑問に感じてしまうわけです」(同・荻原さん)
政府は一体、どこで何を間違えてしまったのか──この問いに荻原さんは「産業と人に適切な投資をしなかった。これに尽きると思います」と指摘する。
将来に不安を覚えて当然
「高度成長期ならソニーやホンダ、トヨタといった日本企業が世界的な大企業に飛躍しました。翻って2000年代、世界で存在感を示す新しい日本企業が誕生したでしょうか? アベノミクスは金融政策の“一本足打法”で、産業育成は充分ではなかったのです。何より人への投資が全く足りていません。今、収入が増えているのは高齢者、女性、若者に限られており、これは人手不足の反映に過ぎないのです。40代から50代の男性は収入が伸び悩んでおり、たとえ正社員であっても住宅ローンの支払い、教育費の高騰、物価高と逆風だらけで、経済的には非常に苦しい状況に追い詰められています」(同・荻原さん)
50代や40代と言えば、人口の多い団塊ジュニアと氷河期世代が含まれていることも見過ごせない。
「食料品とガソリンの価格を下げ、年収の壁は178万円まで引き上げて手取りを増やす。これが正しい政策であるにもかかわらず、石破政権は見送りました。その一方で日本では6年連続、税収が過去最高を更新しています。なぜ税収が増えたのか、それは私たちが納税したからです。私たちの生活は物価高で苦しいのですから税金を“還元”すべきなのに、政府はさらに税金と社会保障費を取ることしか考えていない。これでは将来に不安を覚える国民が増えるのは当然でしょう」(同・荻原さん)
***
外食だけでなく、私たちが日常的に口にする生鮮食品にも“物価高”が影を落としている。関連記事【「スーパーのレシートを見て愕然…」キャベツは10年前の2・4倍に 専門家は「今後も物価の高止まりを覚悟したほうがいい」と警告】では、日本の物価が“高止まり”せざるを得ない理由について経済ジャーナリストの荻原智子さんが解説している。
[3/3ページ]