「えっ、9000円もするの?」 家族3人の外食で“想定外のお会計”に目がテン…“待望のインフレ”が日本を貧しくする理由とは
マックで850円
日銀が“白旗”を掲げたのも2016年だった。当時の黒田東彦総裁は11月の金融政策決定会合で2%のインフレターゲットを事実上、断念する考えを示した。
2016年の消費者物価指数を改めて振り返ってみると、原油や液化天然ガスの輸入価格が下がったことが大きな影響を与えたことが分かる。電気代はマイナス7・9%、ガソリンはマイナス12・3%、都市ガスはマイナス13・7%、灯油はマイナス22・3%……とエネルギー価格が軒並み下落した。
輸入価格を左右するドル円相場は年明け1ドル=120・6円から幕を開け、8月18日には99・7円まで円の価値は上昇。円が非常に強い時代だったことは明白だった。ちなみ今年3月25日現在、1ドル=150・5円と円安が鮮明になっている。
他に対前年比で物価の下落が著しかったものに、洗濯乾燥機(マイナス18・4%)、電気掃除機(マイナス17・4%)、照明器具(マイナス15・8%)などがあった。いわゆる白物家電の販売価格が下がっていたことが分かる。
「身近な外食費を2016年と現在で比較してみましょう。例えばマクドナルドのビッグマックです。16年は単品で370円でした。それが今では470円と約1・2倍の上昇です。サムライマックの『炙り醤油風 ダブル肉厚ビーフ』はMサイズのポテトとドリンクが付くバリューセットで850円。マックで1000円に手が届きそうな価格というのは、今でも信じられない人がいるのではないでしょうか」(同・記者)
日本国民はインフレの被害者
CoCo壱番屋の値上げも大きな反響を呼んだことは記憶に新しい。2016年のポークカレーは11月まで442円、都心部の店舗でも463円だった。だが現在は646円で、こちらも約1・4倍の値上げ。公式サイトでグランドメニューを閲覧すると、ロースカツカレー998円や牛すじ煮込みカレー1132円など、1000円前後の商品が表示されることに驚かされる。
最後に小売物価統計調査を使って、おにぎりの価格を比べてみよう。最近、コンビニでおにぎりを買って「高くなった」と実感している人は多いに違いない。2016年7月、東京都23区でおにぎり1個の値段は117円だった。それが今年1月は164円に上昇している。こちらも1・4倍の上昇だ。
経済ジャーナリストの荻原博子さんは「今の物価上昇は果たしてインフレと見なしていいのかという根源的な疑問があります」と言う。
「物価は上昇しているにもかかわらず、賃金の上昇が追いついていないわけです。これを『スタグフレーション(景気停滞下のインフレ)』と分析する経済の専門家は多いでしょう。私も同じ考えではあります。ただ今回の物価上昇の原因が“戦争”という外的要因と、政府の無策という国内的要因にある点は重要です。国民の真っ当な経済活動で物価が上がったのならともかく、私たちとは無関係に物価が上がり、それが私たちの財布を直撃しているのです」
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