センバツで見せた“超高校級の俊足”エナジック「イーマン琉海」 驚異の三塁到達タイムは大学時代の「周東佑京」に匹敵!

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取材して分かった「視野の広さ」

 一方、セカンドの守備は、立ち上がりの1回に二遊間を抜けそうな鋭い当たりに追いつき、素早く一塁に送球してアウトに。3回にもツーアウト満塁のピンチからボテボテのゴロに対して、ダッシュしながら前進。ランニングスローで処理する好プレーを披露している。

 また、6回の守備では、ワンアウト一・二塁から相手の仕掛けてきたダブルスチールに対して、捕手が落ち着いて二塁に送球し、スタートが遅れた一塁走者をアウトにした場面があった。ここでのイーマンの動きも軽快だった。

 そして、筆者が試合後のインタビューで驚かされたのが、“視野の広さ”だ。ノーアウト一塁で迎えた第4打席では、ショートへの内野安打を放っているが、このプレーについて、イーマンは以下のように振り返ってくれた。

「“ノーサイン野球”ということで、選手同士で意思の疎通を図るということを徹底してきました。あの場面は、(一塁ランナーと)アイコンタクトをしたわけではなく、(試合の)展開として相手が走ってくることを想定していました。一塁走者が走ったら、相手の守備はショートが、二塁にカバーに入るのも分かっていたので、(ショートが移動して、空間ができる)三遊間を意識して打ちました。チームとしても、ヒットエンドランを狙い通りに2つ決めることができて良かったです」

 この打席で打ったのは、4球目のボール。その前には、セーフティバントの構えを見せている。相手の守備を揺さぶり、どうやってチャンスを広げるか、考えながら、プレーしていたそうだ。とっさの判断だけでなく、守備の動きも事前に把握していることを考えると、視野の広さに加えて、野球選手として“頭脳”も優れている。

スカウト陣も「面白い選手だと思います」

「三遊間を意識して打つ」と言っても、高校球児が易々とできることではない。頭で考えるだけでなく、プレーに確かな技術が伴っているからこそなせる業と言えるだろう。

 もちろん、意識と技術はすぐに培えるものではなく、イーマン自身も、入学当初は苦労したと語っていた。ただし、昨年のチームから不動のセカンドで活躍しており、レベルの高い野球に順応できる能力があったことは間違いない。

 身長164cm、体重65kg。小柄な体格を考えると、すぐに高卒でプロ入りするタイプではないように見えるが、スカウト陣は「足はもちろん速いけど、打撃がいいですね。あれだけしっかり振れて打球も速い。面白い選手だと思います」と高い評価を与えていた。この日のプレーが、観客だけでなく、プロの“目利き”に対しても訴えかけるものがあったのだ。

“超高校級の俊足”を誇るイーマンが、この先、どんな野球選手に成長していくのか、読者の方もぜひ注目して頂きたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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