まもなく投手・打者・パパの三刀流! 「大谷翔平」に“元パ・リーグ首位打者”の保育士がアドバイス「父親が参加すると確実に子育ての質が上がります」

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「保育士の配置基準」と育児の関係

 その高沢さんは現在、横浜市にある「大豆戸どろんこ保育園」で保育士として勤務している。2022年に保育士の資格を取得した経緯は後述するとして、まずは、なぜドジャースの同僚選手は「大谷も育児に参加する」ことを当然と考えているのか話を聞いた。

「どうして父親は育児に参加すべきか、様々な専門家が様々な視点から論じています。子育てには大変なエネルギーが必要で、親一人では大変なことは言うまでもありません。そこで私は『保育士の配置基準』を元に考えてみたいと思います。認可保育施設は厚生労働省の定めた基準に従う必要があり、例えば3歳児は子供15人あたりに保育士1人、1歳児と2歳児は6人あたりに1人、そして0歳児は3人あたりに1人と決まっています(註)。つまり子供が小さければ小さいほど人手が必要であり、人手をかけると子育ての質が上がるということを意味します。つまり母親が1人で子育てをするより、父親が参加するほうが確実に子育ての質が上がるということが分かります」

 とは言え、そもそもプロの野球選手は自宅を空けることが多い。高沢さんは「メジャーリーグならレギュラーシーズンは基本的に4月から9月下旬、ポストシーズンは10月初旬からとなっていますが、実際に拘束される時間はさらに長いでしょう」と言う。

「親の死に目にも会えない」

 日本のプロ野球選手なら年が明けた1月からトレーニングを始める必要があり、それに春のキャンプが加わる。メジャーの場合はキャンプ地に家族を呼び寄せる選手もいるようだが、子育てに参加できる時間が少なくなるのは間違いない。

「さらにシーズンが始まると、ナイトゲームや遠征が基本です。私がパ・リーグでプレーしていた時、シーズンの半分は阪急、近鉄、南海との試合で関西にいました。メジャーの場合は、さらに遠征は長期に及ぶでしょう。選手は1年のうち最低でも半分、場合によっては3分の2、家族と共に暮らせないことになります。子育てに参加したいと思っても、物理的に不可能という日々が多いのです」(同・高沢さん)

 昭和の日本プロ野球は、今よりももっとひどかった。何しろ「親の死に目にも会えない」ことが美談として報道されていたのだ。1988年には阪神の主砲だったランディ・バースの12歳の子供が水頭症と診断され、緊急手術に付き添うため帰国した。ところが、シーズン途中の帰国は一部のスポーツメディアやファンの批判を招いた。少なくとも当時の日本人は私事で仕事を離れることを「職場放棄」、「わがまま」と見なすことが珍しくなかった。

次ページ:できることをやる

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。