賛否両論の「スマホ注文」 飲食店が導入せざるを得ない「深刻な事情」 経営者が明かす「タブレット導入費用は1店舗600万円」

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日常の光景に

 最近急増しているスマホからのメニュー注文。大型ファミレスチェーンでは、タブレット注文やスマホ注文が日常の光景となっている。だが、客からは注文時に個人所有のスマホを使用することに不満の声もあがる。バッテリーや通信費がかかるため、「損をしているような気持ちになる」「客に仕事をさせているようで納得できない」というもの。ただ、経営側にとっては導入せざるを得ない深刻な事情があるようだ。

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 個性的なメニューで人気を集めている地方のファミレス店経営者(65)が、取材に対しこう明かす。

「地方では人口減少による人手不足が深刻で、本当に猫の手も借りたいほど。来店客対応として昨年、やむを得ずタブレットオーダーシステムを導入しました。費用は600万円と決して安いコストではないですが、店員が一つ一つ注文を聞きに行く手間が省け、大いに助かっています。ついでに水もセルフ式にしました。これによってお客様に料理を出すまでの時間がぐっと短縮されました」

 タブレットオーダーとは、飲食店などのテーブルに設置されたタブレット端末を使い、客自身がメニューから料理を注文するシステムのこと。オーダーをセルフ化することで人件費の削減、注文ミスの防止、時間短縮、感染症対策、売れ筋データの分析などメリットが多い。それにしても1店舗600万円とは驚きの費用だが、人件費を考慮すると決して高い投資ではないという。

 都内の回転すしチェーン店でも注文用のタブレットを全席に配置しており、外国人観光客への対応のため言語は日本語、英語、中国語(繁体字)、中国語(簡体字)、韓国語に切り替えられる。言語の違いによる店と客のコミュニケーション不全の解消に大きく役立っている。

 10年間、この店に通い詰めている常連の自営業者がこう話す。

「午後5時ごろ渋谷の百貨店に入っている店舗に1人で入ったら、30席ほどあるカウンター席の9割が外国人でした。奥の方からは英語の笑い声が聞こえ、隣は中国人カップル。店員さんも胸に話せる言語を示す国旗のバッジを着けていて、多くは日本語とネパール語でした。タブレットが導入される前は、注文の仕方が分からず座席でおどおどしている外国人観光客を見かけましたが、今はそんな姿は見ないですね」

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