賛否両論の「スマホ注文」 飲食店が導入せざるを得ない「深刻な事情」 経営者が明かす「タブレット導入費用は1店舗600万円」

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高齢者には戸惑う人も

 こうしてみると、タブレットオーダーシステムはいいことばかりにも聞こえるが、スマホ式の場合、客自身はバッテリーや通信費がかかるため、不満を抱きがちという。また、スマホに慣れていない高齢者の中には戸惑う人も続出しており、店員が直接接客する従来のおもてなしスタイルへの“郷愁”も。

 ただ、前出の経営者はこうも打ち明ける。

「タブレット端末でオーダーを取るのは店側にとってはとても便利ですし、ほとんどのお客様から苦情が出たこともありません。ただ、これは盲点なのですが、お客様が卓上のタブレットを床に落としてしまうケースが実はけっこうあります。当店ではすでに4台が破損し交換せざるを得なくなりました。維持費を含めて業務用は、1台10万円はかかるのでかなりの出費です。こういう事情から当店でもスマホ注文を導入するため、準備を進めています。タブレット導入より低コストですし、現在のメニュー価格を維持するため背に腹は代えられません」

 タブレット自体にも問題はある。衛生上、他人がさわった画面をさわりたくないという客もいるからだ。それなら自分のスマホが良いという考えも成り立つ。

 大手イタリアンチェーン店のサイゼリヤでは従来、卓上に配置されている専用の注文用紙に手書きでメニュー記号を書き込んで店員に渡し、店員がそれを復唱するアナログ方式を続けていた。だが、ここに来て一気にカード決済やセルフレジの導入を加速させている。同社の第52期年次報告書によると、24年8月にセルフレジの導入を完了。客自身がスマホを使って注文するモバイルオーダーも400店舗で実施しており今期末までに全店舗で完了予定という。食材、配送料、人件費などの値上げラッシュにもかかわらず低価格メニューを続けるためにはやむを得ない投資だろう。店内ではWi-Fiが使えるためギガ浪費したくない場合、そちらに繋げばよい。

 ただ、こんな嘆き節も。

「店内の3か所にWi-Fiを設置すると別途数十万円かかります。これに月々の使用料もかかるので負担は増えるばかり。今の価格を維持するためには、お客様のご協力がどうしても必要です」(前出の経営者)

 食べる側もコスト意識を持たざるを得ないのかもしれない。

デイリー新潮編集部

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