変わる「社食」事情 拡大する置き型市場にタニタ参入…健康志向&冷凍に商機

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 弁当持参の会社員は絶滅危惧種に? オフィスに設置した冷蔵庫などに届けられた食事を、従業員に利用してもらう「置き社食」を導入する企業が増えている。今回、新たに健康総合企業の「タニタ」が参入。市場の成長は加速するのか。

タニタが「置き社食」市場に参入

「2021年からJAL国際線の機内食を監修しており、冷凍でもおいしさを確保し、かつ咀嚼感を残せるレシピを開発してきました」

 こう説明するのは、株式会社タニタ食堂の浅尾祐輔営業本部長だ。2023年からはTSUTAYAのフィットネス業態「TSUTAYAコンディショニング」の冷凍弁当も手掛けており、「拡販できる」と判断。今年2月上旬に置き社食サービスの「タニタカフェat OFFICE」の1都7県での展開を発表すると、3日間でエリア外からも含め200件超の問い合わせがあった。

 パスタやカレー、スープなど冷凍状態で提供される食事メニューは6種類が用意される。健康総合企業を謳うタニタだけに、栄養面には確固たる自信を持つ。

「1食完結型で、1日の野菜接種目標量の3分の1は摂れます。これだけ野菜が入った市販の弁当はそうそうありません」(同)

 ターゲットは、コロナ禍で社食の運営が中止されたままの企業や、もともと社食のない、主に従業員100~300人程度の企業だという。最少で48食が入る冷凍庫を設置し、月額利用料金は4万9,500円(商品代金別)でサービスを展開する。解凍に時間はかかっても冷凍仕様としたのは「技術の進化でおいしさを確保しながら、食品ロスも少なくなる」(同)からだ。

市場“創出”の「OKAN」は

 そんな「置き型社食」サービスの嚆矢ともいえるのが、2014年から株式会社OKANが提供する「オフィスおかん」だ。契約した企業に冷蔵什器を設置し、従業員は定期的に補充される総菜などを手に取ることができる仕組みである。同社の沢木恵太社長は「当時は設置型で企業が費用を負担する食提供モデルは他にはなかった」と自負する。

“人的資本経営”や“健康経営”、ワークライフバランスが重視される中で置き型社食サービスが注目を浴び、業績を伸ばしてきた。製造業や建設業のノンデスクワーカーの職場は、周辺に飲食店やコンビニが少ない郊外にあることも多く、置き型社食を提供する企業は増えているという。

 とはいえ、2015~16年頃に食品系メーカーらがこぞって事業に参入したものの、月額利用料金制ではなく商品を置くだけのコンビニ型が多かったため、採算が取れずほとんどが早々に撤退してしまった。

 オフィスおかんは月7万円から導入可能で、これに従業員の食事料金も含まれている(食事料金を会社が負担するか社員が負担するかどうかは企業によって異なる)。食材の調達から物流、納品のサプライチェーンとオペレーションを一手に担っており、「若手が多いので肉系のおかずがほしい」といった需要に応じたさまざまなプランを提供している。「おかずだけ」も可能で、全国47都道府県に顧客企業を抱える。

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