石破首相が杉田水脈氏を切れない“本当の理由” 「キーワードは、宗教団体を含む“岩盤保守”」
「強烈な違和感は持っております」
商品券問題の陰で注目を集めているのが杉田水脈(みお)元衆院議員(57)の参院選比例代表への擁立決定だ。なぜ、石破茂首相(68)は思想信条的に相容れないだろう彼女を公認せねばならなかったのか。そこには安倍政権を支えた“岩盤保守”の存在が見え隠れする。
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3月21日、石破茂首相が参院予算委員会で語気を強める一幕があった。
「私は強烈な違和感は持っております」
夏の参院選比例代表で自民党に公認された杉田水脈元衆院議員。過去にさまざまな発言で物議を醸した彼女の公認の是非について、野党議員から質された際の答弁である。
参院選はこの夏に行われることが確定しており、これは、その参院選で自民党公認を得た杉田氏を巡る参院予算委員会でのやりとりだ。質問に立ったのは立憲民主党の杉尾秀哉参院議員。そこで石破氏は、法務当局から人権侵犯を認定された杉田氏の公認の是非を問われ、こう述べた。
「自由民主党はいかなる不当な差別も許しません。今ご指摘のようなこと、これは私としてはとても賛成し得ない。“男女平等は反道徳の妄想である”とか“女性はいくらでもうそをつける”とか、こういうような(杉田氏の過去の)発言に対しては、私は強烈な違和感は持っております」
「そこまで言うのならなぜ公認したのか」
質問に立った杉尾氏が語る。
「正直、石破さんの答えにはびっくりしました。もう少し(杉田氏を)かばうのかなとも思っていたんですけど、そこまで言うのならなぜ公認したのか。言っていることと、やっていることが違います。ああ答えておきながら、実際には公認を取り消してもいないわけですから」
最終的な公認権者は自民党総裁の石破氏だ。その氏が「強烈な違和感」を持ちながら、杉田氏を公認せざるを得なかった理由について杉尾氏は、
「石破さんも答弁で言っていましたけど、いろいろ考えたのでしょう。比例票が何票くらい増えるだろう、とか」
と言う。政治部デスクが補足する。
「キーワードとなるのは“岩盤保守”です。杉田氏は、比例中国ブロックの上位で厚遇されるほど故・安倍晋三元首相の寵愛を受け、タカ派を喜ばせるような発言を度々してきました。そんな彼女の公認は、安倍政権を支えたものの現在では離れてしまった“岩盤保守”を取り戻すためでしょう。背に腹は代えられなかったということです」
この点、評論家の古谷経衡(つねひら)氏も、
「岩盤保守はいわゆる“安倍応援団”と言われていた人たちで、50代以上のミドルシニア層が中心。そうした層から支持を受ける杉田氏は、自民党の比例票や自民党員の獲得に役立つというわけです」
と指摘する。
「岩盤保守の一部を形成してきたのは宗教団体」
一方、安倍氏と近しかった議員がこう打ち明ける。
「岩盤保守の一部を形成してきたのは神社本庁関係をはじめ、崇教真光(まひかり)、霊友会などの宗教団体ですよ。安倍さんはそうした友好団体を大事にした。彼らにあいさつする時、必ず“伝統的な家族のかたちがわれわれの力になっています”“英霊に対して尊崇の念がある”というように、関係者の琴線に触れるフレーズを口にしてね。“安倍さんもわれわれと同じ気持ちなんだ”と思ってもらうのが上手でした」
もっとも、第2次安倍政権が支持を集めたのは、アベノミクスという要因が大きかったという指摘をする専門家もいる。3月27日発売の「週刊新潮」では、安倍政権下では決して離反しなかった岩盤支持層が崩壊し始めた“きっかけ”、今夏の参院選を巡る自民党の苦境など、激動の政局を詳報する。