2025年「大学志願者数1位」に輝いた「千葉工業大学」とは? 「早大」「近大」を抑えて“郊外の理系大学”が躍進した理由
OBは有名企業の経営者から「舘ひろし」まで
大学の人気に大きく影響する就職実績も、実は世間のイメージ以上だ。ソニー、京セラ、味の素、日立製作所、キーエンス、三菱重工業、大日本印刷、凸版印刷、キヤノンなど有名企業の名が並ぶ。「国策」に近いかたちで大学が設立され、長年にわたり、これら大企業が満足する中堅技術者の育成に注力し、信頼関係を得てきた結果といえるだろう。入試難度を考えたらかなりコスパがよいかもしれない。
卒業生の顔ぶれも豪華で、経営者から大学教授、俳優まで幅広い。アスキー創業者の郡司明郎氏、キヤノン名誉会長で「キヤノン中興の祖」といわれた賀来龍三郎氏(故人)、元日野自動車社長の湯浅浩氏(故人)、任天堂ファミリーコンピューター、スーパーファミコンなどの開発主任で、元・立命館大学大学院教授の上村雅之氏(故人)、そして俳優の舘ひろし氏など、そうそうたる名前が並ぶ。余談だが、上智大学理工学部の創設には、元上智大学名誉教授の五味努氏(故人)をはじめ、千葉工業大学の関係者が貢献していたという。
いずれにせよ、就職実績、卒業生の厚みは想像以上だと感じただろう。これが今のところ「日東駒専」の理系学部クラスの入試難易度であるからかなりお得だ。志願者数が1位となったことで、志願者の質や就職実績がどう変わっていくか、筆者は注目している。
MITの伊藤譲一氏が学長に
一方、「純粋に授業の内容が面白い」という塾関係者の意見も少なくない。看板学問である「宇宙」「ロボット」を中心に著名研究者が集まっていて、
「研究面では、日本唯一、世界レベルのオンパレード」(先述の田嶋氏)
との評もある。
まず、宇宙分野は、前学長の故・松井孝典氏が2009年に惑星探査研究センターを創設したことを機に、内部で力点が置かれ始める。松井氏は地球物理学、比較惑星学などの著名な専門家であり、JAXAをはじめ全国の研究機関から有力な研究者を引き抜いている。14年に人気漫画の「宇宙兄弟」とのコラボレーションでも話題になった。
ロボット工学の分野に力を入れはじめたのは、03年の「未来ロボット技術研究センター」設立が発端だ。所長の古田貴之氏(工学博士)は有名だろう。06年には、工学部に未来ロボティクス学科を新設。学生は日本トップレベルの研究者とともに学べる環境になった。
そしてなんといっても、23年7月に米・マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボ所長であった大物、伊藤譲一氏を新学長として迎えたことだ。これは、メディアでも大きく取り上げられ同大学に注目が集まるきっかけとなった。
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