「扇千景」「坂田藤十郎」の大豪邸が財務省の抵当に入った理由 「成駒家」兄弟に相続税がのしかかり「3億5000万円」を延納へ
親兄弟が没した後、頭を悩ませるのが相続税の支払いである。資産家であればあるだけ、生前、うまく対策をとっておかなければ重くのしかかることになる。それはあの名門一家も例外ではなかったようだ。この3月で3回忌を迎えた扇千景・元参院議長。夫は人間国宝の歌舞伎役者、故・坂田藤十郎、息子2人も著名歌舞伎俳優と、絵に描いたような名家である。しかし、生前住んでいた都内の大豪邸が昨秋、財務省の抵当に。専門家は相続税を期限までに一括で支払うことが出来ず、延納手続きを取ったためと見ている。
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【写真】まるで高級マンション…抵当に入った大豪邸 華麗過ぎる芸能一家の写真も
扇千景は、1933年生まれ。宝塚歌劇団で活躍し、女優として映画やテレビドラマなどに出演して人気を博す。24歳の時に歌舞伎役者・後の四代目坂田藤十郎と結婚。その後も芸能活動を続けるが、44歳の時に請われて自民党から参院議員選挙に出馬。当選を果たす。以後は新生党、新進党、自由党、保守党などを渡り歩き、自民党との連立時には建設大臣や国土交通大臣に就任。当選5回、議員生活は26年を数え、自民党に復党後は参議院議長にまで上り詰めた。2007年に議員を引退し、2023年3月9日、食道胃接部がんで死去した。享年89。
夫の故・四代目坂田藤十郎は1931年、やはり人間国宝の名優・ニ代目中村鴈治郎の長男に生まれた。曽根崎心中の名演でブームを築き、上方歌舞伎の大看板として活躍。1994年に人間国宝に指定された。2005年に坂田藤十郎を襲名し、2009年には文化勲章を受章している。2012年には日本俳優協会の会長に就任するなど、名実ともに歌舞伎界の頂点に君臨した。一方で、女性関係も派手で、2002年、70歳の時に51歳年下の舞妓とホテルに滞在。彼女を見送る際、バスローブの前を開く“開チン”写真を撮られてしまったことはあまりに有名だ。2020年、88歳で老衰により死去。妹は中村玉緒、義弟に当たるのが故・勝新太郎である。
2人の間には息子が2人おり、長男は四代目中村鴈治郎、次男は三代目中村扇雀の名跡で活躍。いずれも名優と評価が高い。
土地は451平米
その2人が生前、住まいを構えていたのは、さる都内の高級住宅地だ。近くには麻生太郎元総理や楽天創業者の三木谷浩史氏、デヴィ夫人、元チェッカーズの藤井フミヤらが住まいを構えている。扇、坂田夫妻の自宅はその中でも目立つ3階建てのビル。土地面積は約452平米もある、名家の名にふさわしい豪邸だ。
この土地は昭和35年に坂田藤十郎によって購入された。所有権は坂田が100%持っており、坂田が2020年に死去した後は妻・扇千景が単独で相続している。法定通りなら、扇が2分の1、子の鴈治郎と扇雀が4分の1ずつ相続するはずだが、さる税理士によれば、
「配偶者が相続した場合は、相続税額が大幅に控除されるケースがあります。あるいは、他の遺産も含めて遺産を分割し、その中で本件不動産はすべて扇さんが、となったのかもしれません。いずれにせよ、相続の際にはよくあるケースです」
その3年後、今度は妻の扇が亡くなる。登記簿の「甲区」、すなわち所有権の欄を見ると、今度は法定通り、息子である鴈治郎と扇雀が2分の1ずつこれを相続している。
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