普遍的な“父の無念を晴らす娘”を描くかと思いきや… 広瀬すず主演「クジャクのダンス、誰が見た?」の真相が気になり過ぎる理由
割と土着的というか普遍的な「父の無念を晴らす娘」を描くと思いきや。「水」という不穏なアイテムの投入で現代的な薄気味悪さが倍増。マルチ商法かカルトか宗教か、そこに国家権力もついてくるとしたら、そりゃ気になるわな。今期作品の中でもスタートが遅かった「クジャクのダンス、誰が見た?」の話である。
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民族音楽っぽい劇伴にインドのことわざのタイトル、意味深な暗喩で引きつけつつ、22年前の陰惨な資産家一家惨殺事件との接点が浮かび上がるわ、登場人物が次々殺されるわ、謎の人物が裏で糸を引いているわで、あおりと焦らしが利いている。
主人公・山下心麦(こむぎ)を演じるのは、貫禄が先走り過ぎて、もはやそのへんの普通の女の子を演じられなくなった広瀬すず。今回もいろいろと背負わされてるのよ。
心麦は、母(仙道敦子)が病気で他界、刑事だった父・春生(はるお:リリー・フランキー)と二人で生きてきた大学生だ。ところが、父が殺害されて人生が一変。というか、父が遺した一通の手紙が悲劇と苦悩の始まりだった。父娘行きつけの屋台ラーメンの店主(酒井敏也)に託された手紙には、数人の名前が書かれてあり、300万円が添えられている。父は「もし、自分を殺した容疑で彼らが逮捕されたら、冤罪なので弁護士に弁護を依頼してほしい」と遺していた。実際に、父の殺害容疑で逮捕されたのが遠藤友哉(成田凌)。22年前の一家惨殺事件で犯人とされた遠藤力郎(酒向芳)の息子である。その怨恨と報じられたが、友哉は父の手紙に書かれた人物だった。心麦は父の手紙を信じて、ある弁護士の元へ。
面識もないのに春生になぜか指名されたのは、松風義輝(松山ケンイチ)。冤罪を許さないのが信条の刑事弁護士だ。同僚弁護士の波佐見幸信(森崎ウィン)と共に、孤独な心麦を支えて、友哉の弁護に動き始める。ようしゃべる弁護士・鳴川徹(間宮啓行)も謎の急接近で協力してくれることに。
心麦を翻弄するのは週刊誌記者の神井孝(磯村勇斗)。一家惨殺事件の真相に迫るために心麦の身辺を執拗(しつよう)に調べ上げ、情報の取引を仕掛けてくる。チャラく見えても辣腕、敵とは言い難く。
逆に、春生の部下だった赤沢正(藤本隆宏)とその妻(西田尚美)は、心麦を温かく見守ってくれるように見えたが、変な水に心酔しているあたりが実に怪しい。
謎の人物(声だけで顔は見せない)と連絡を取り、春生の死を怨恨による事件として処理したがっているのが、検事・阿南由紀(瀧内公美)。過干渉な母(有森也実)との確執があるようだ。
そうそう、実は、松風の父(篠井英介)も刑事だったが、警察の不祥事を機に行方不明になった背景もある。テーマは「親子の絆(呪縛)」「冤罪」に見えるが、過去と現在の複数の事件が絡んで、ブラフも過多。これ、現代日本にも蔓延(はびこ)る「国家権力とカルト集団の結託」ってやつ? 弱い人や正しい人が犠牲になって巨悪が高笑いするやつ? 真相が分かっても後味悪いやつ? 何にも知らないほうが幸せだったと思うやつよね?