「おしっこやうんちで重くなったおむつをはいた子が徘徊…」 子育てを放棄して宗教の集まりに 山上被告の母がハマった“もう一つの怪しい団体”【統一教会に解散命令】

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母の統一教会への“多額寄付”とネグレクト、父と兄の自殺 山上容疑者を狂わせた背景(前編)

 東京地裁は25日、宗教法人としての世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対して解散命令を下した。一方、教団側は地裁の決定を不服として即時抗告する方針を明らかにし、徹底抗戦の構えを見せている。だが、宗教法人として解散したとしても、関連団体などは存在しており、形を変えてこれまでの教団活動が続いていくという問題も指摘されている。今後、統一教会、そして信者はどこへ向かうのか――。

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 統一教会問題の発端となったのは、山上徹也被告(44)による安倍晋三元首相銃撃事件である。凶弾が放たれるまでには、紆余曲折の不幸の連鎖があった。最初の悲劇は山上被告の母がある団体にハマり、その後ノイローゼとなった父が自殺したことだった――。改めて問題の深淵に迫る。

(以下、「週刊新潮」2022年7月21日号掲載記事をもとに、加筆・修正しました。日付や年齢、肩書などは当時のまま)

 参院選投開票を間近に控えた7月8日、午前11時31分。奈良市の大和西大寺駅前で1発目の銃声が鳴った。演説中だった元総理はマイクを止め、轟音が鳴り響き白煙が舞う中、ふっと後ろを振り返った。刹那、続けて放たれたのは2発目の銃弾。標的となった元総理は左腕をかばうように、演説台からくずおれた。

 周囲の聴衆は何が起きたかも理解できぬ一方で、銃を構えていた男は大事を成し遂げて立ち尽くしていた。しかし、瞬時に警察官が男の身柄を確保。安倍元総理は奈良県立医大病院に運ばれ、昭恵夫人が到着するまでの間、必死の救命措置が行われるも、還らぬ人となった。

 享年67。

 奇しくも父・晋太郎氏がすい臓がんで逝去したのと同じ年齢だった。

「安倍さんは犯人の手製の銃で左上腕部を撃たれたことにより、鎖骨の下にある左右の動脈が傷つき、これが致命傷になりました。死因は失血死でした」(社会部デスク)

「(妻の)韓鶴子を狙っていた」

 現職の政治家、それもいまだ自民党内で権勢を振るう、最大派閥の長でもあった安倍元総理を公衆の面前で射殺したのは、奈良市在住の山上徹也容疑者(41)だった。当人は警察の取り調べに、

「母親が統一教会に多額の寄付をして家庭が崩壊した」

「(創始者の)文鮮明がアメリカで有罪判決を受けたため、(妻の)韓鶴子を狙っていた」

「コロナで韓鶴子が来日できないので、標的を変えた。統一教会と関係の深い岸信介の孫を狙った」

 と供述しているという。

 安倍元総理は祖父の岸信介元総理とともに教会との関係の近さが報じられたことがあり、関連団体の式典に祝電を送ったことも。これらの供述から分かる通り、徹也が歪んだ殺意を抱くようになった背景には「宗教」があった。その履歴をたどると、彼の人生を大きく左右したのは宗教にのめりこんだ実母(69)の存在、さらには家族を次々と襲った「自殺の連鎖」であった。

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