「夫の死亡保険など総額1億円以上を献金」 それでも山上徹也被告の母親が語っていた“本音”は「信仰は続けたい」【統一教会に解散命令】

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〈安倍は本来の敵ではない〉

 兄の死をもって、ジョーカーに変貌する素地は整ったといえよう。ただあくまでも、憎しみの対象は一貫して統一教会であり、米本氏への手紙でもこう記している。

〈苦々しくは思っていましたが、安倍は本来の敵ではないのです。あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの一人に過ぎません。

 文一族を皆殺しにしたくとも、私にはそれが不可能な事は分かっています。分裂には一挙に叩くのが難しいという側面もあるのです。

 現実に可能な範囲として韓鶴子本人、無理なら少なくとも文の血族の一人には死んでもらうつもりでしたが鶴子やその娘が死ねば3男と7男が喜ぶのか或いは統一教会が再び結集するのか、どちらにしても私の目的には沿わないのです。〉

 なお、ここに登場する三男は教団から追放された存在で、七男もサンクチュアリ教会なる分派を率いている。山上容疑者が韓鶴子を敵視し、“銃器礼賛”思想のサンクチュアリに属しているとの情報が一部であったが、それは誤りのようだ。

 米本氏は、

「“安倍は本来の敵ではない”という認識は合っていますよね。本人が自覚している通り、一番に韓鶴子を狙いたかったけど、できないから安倍さんを、というのはおかしいよね。もっと違う方法があるはずなのに、それを考えられないくらい追い込まれていたということでしょうか」

「喉から手が出るほど銃が欲しい」

 一昨年末には、米本氏のブログへのコメントでも教団に対する激しい憎悪を見せていた。

〈統一教会(中略)を破壊しようと思えば、最低でも自分の人生を捨てる覚悟がなければ不可能ですよ。

(中略)我、一命を賭して全ての統一教会に関わる者の解放者とならん〉

〈世界平和家庭連合? ポルポトか? スターリンか? ヒトラーか? どんな地獄だ?
 人の生き血はどんな味だ?〉

〈統一教会の所業が彼ら(ヒトラーやスターリン)に比肩し得る人類に対する罪レベルだからだ。

(中略)いずれ誰かが殺されるだろう。

 私と社会にはそれをビールでも飲みながら娯楽として消費する権利がある。行使するかは自由だが。

 だが言っておく。復讐は己でやってこそ意味がある。不思議な事に私も喉から手が出るほど銃が欲しいのだ。何故だろうな?〉

「信仰は続けたい」

 そして今年1月、派遣先の工場で同僚と仕事の仕方などを巡って衝突。その後もトラブルがあり、5月に自己都合で退職している。

 増幅する狂気がそのまま犯行直前の手紙に記された決意につながっていることが分かる。“狂弾”の原因を作った母親の現在の心境は冒頭で紹介したが、教団に対してはどう思っているのか。前出の統一教会関係者が声を潜めて言う。

「母親は安倍さんのご家族に謝罪したいとは話していましたが、一方で、息子さんがこれだけ重大な事件を起こしたのに、教会の批判は一切、口にしていません。事件後も“私の至らなさで、こんなことになってしまった。でも、信仰は続けたい”と言っています」

 この期に及んで、信心は揺らいでいないというのだ。

 一方で、山上容疑者の妹に遭遇した知人は、こう打ち明けられたという。

「あの事件あったやろ。あれの犯人、ちょっと身内っていうか、私のお兄ちゃんやねん。だから今ちょっと面倒くさくて大変なんや。でも、もう4年くらい会ってないし、一緒に住んでもおらんから、事件起こしたとか言われても、知らん」

 山上容疑者の手紙は最後、こう結ぶ。

〈安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません。〉

 だが邪宗にもたらす意味、結果は明確に見通していた。彼はこう供述している。

「自分が安倍氏を襲えば、家庭連合に非難が集まると思った」

 ***

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デイリー新潮編集部

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