「夫の死亡保険など総額1億円以上を献金」 それでも山上徹也被告の母親が語っていた“本音”は「信仰は続けたい」【統一教会に解散命令】

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「東京地裁は25日、宗教法人としての世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対して解散命令を下した。一方、教団側は地裁の決定を不服として即時抗告する方針を明らかにし、徹底抗戦の構えを見せている。だが、宗教法人として解散したとしても、関連団体などは存在しており、形を変えてこれまでの教団活動が続いていくという問題も指摘されている。今後、統一教会、そして信者はどこへ向かうのか――。ヒントとなるのは、2022年7月に安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也被告(44)の母が、事件後に語っていた「信仰は続けたい」という言葉である。

(以下、「週刊新潮」2022年7月28日号掲載記事をもとに、加筆・修正しました。日付や年齢、肩書などは当時のまま)

 ***」

「今は少し落ち着いてきたけど、まだ今後のことは考えられない。まずは、安倍さんのご家族、親族の方々に謝罪したい。私の至らなさで……」

 7月17日の朝、山上徹也容疑者の母親は親しい統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関係者に、電話でこう打ち明けていたという。彼女が打ち砕いてしまった息子の人生。彼が行動を起こすにあたり、触発された映画があった。

 3年前、愛知県常滑市の国際展示場から自宅に帰る道すがら、山上容疑者の脳裏には時折、前々日に観たその映画のシーンが、断片的に浮かんでは消えていたことだろう。

教会トップの暗殺は失敗

 その日、2019年10月6日は、統一教会の信者にとって特別な一日だった。

 教祖文鮮明亡き後、信者たちが「真のお母様」と崇める教団のトップ・韓鶴子(79)。彼女が、日本の信者の前に姿を見せる日だったのである。

 絶対に殺す――。山上容疑者は固い決意と共に、荷物に火炎瓶を忍ばせて、イベント会場に入ろうとした。だが、

「部外者は会場に入場できず、この時、山上容疑者は計画を断念しています」(捜査関係者)

 あの映画の主人公みたいにはなれなかった……。失意は深かったに違いない。

 後に彼はTwitterにこう書きつけている。

〈オレがJOKERを観たのは鶴子がやって来る前日、名古屋でだった。〉(20年8月12日)

 国際展示場でのイベント前日の5日、韓は名古屋市内のホテルに米下院議員や自民党議員たちを招き「ジャパン・サミット」を開いている。

 その前の日、つまり19年10月4日は映画「ジョーカー」が日米同時公開となった初日だったのである。

〈ジョーカーは何故ジョーカーに変貌したのか。何に絶望したのか。何を笑うのか。〉(20年1月26日)

「ジョーカー」は、特殊な疾病を抱えた男が、社会の底辺から這い上がろうとするも、心折れ、社会へ復讐する悪役・ジョーカーになり、世上を騒乱の渦に陥れる物語である。

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