レス妻に当てつけるようにSM不倫 「我ながらクズ」な42歳夫が戸惑う人生の急転回

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【前後編の後編/前編を読む】新婚旅行でも“拒否”した妻、「せめて2カ月に1回は…」 自信喪失の42歳夫が下した決断は

 松永優輔さん(42歳・仮名=以下同)が結婚した玖美さんは、人づきあいがあまり好きではないタイプだった。交際時からデートは2~3カ月に1度で、新婚旅行時でも性行為を拒否。「結婚10年で10回もしてないと思います」と優輔さんはいう。「レスが続いたままで、後から子どもが欲しくなって不妊治療は大変」などなど訴えたものの、やはり彼女は変わらなかった。とうとう吹っ切れた優輔さんは、性的な部分は「外で」すませると決めた。

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 優輔さんは、自身の性的価値を低く見積もっていた。だがマッチングアプリ等で出会い、関係をもった女性は、それなりに評価してくれる。もしかしたら、もっと自分の好む性的関係を追求していってもいいのかもしれない。彼はおずおずと欲求を露わにしていった。

 彼はSM愛好者である。セックスよりSMのほうが好きだと気づいている。

「それとなく自分の指向に気づいたのは小学校4年生くらいのときですね。その後、何かの漫画で、SMクラブでおしっこをかけられて喜ぶ女性の絵を見て脳天がズキュンとやられて。かわいそうな目にあっている女性がたまらなくかわいかった。成長するにつれて、鞭とか白い肌に針を刺すとか、そういう方向に向かっていきました。当時、世紀末の終息感の中、エログロやクラブカルチャーみたいなサブカルに魅せられていったんです。僕の中では、そういうサブカルとSMがおしゃれなものになっていった。たとえば舌ピアスとか、皮膚に宝石を埋め込む行為とか。それがSMと結びついたんでしょうね」

SMは僕にとって救い

 当時の彼にとって、SM行為に走るのは、妻へのあてつけのようなものもあったのかもしれない。知り合った女性を妻の留守に自宅に呼び、性的行為をしながら妻の部屋まで歩いていったこともある。これは相手の女性を「精神的にいたぶる」ことになるし、もし妻にわかったときはショックを与えることにもなる。だがそうすることで、実は彼自身も傷ついている。「自分のクズっぷりを自覚することになる」からだ。それをわかっていながら、そうした行為をやめられなかった。幾重にか屈折しながら一周回って自分に戻ってくるようなものだ。冗談めかしながらも、実際は真摯に言葉を紡ぎ出している彼の表情を見ながら、これは精神的なひとりSM状態なのではないだろうかとも感じた。

「そうかもしれませんね。ただ、SMは僕にとって救いなんです。男として、妻という存在からまっとうに性愛を求められることがなかったから、何かしっかりした実体がほしいのかもしれない」

 SMにもいろいろな嗜好性がある。彼が望むのは、「支配しながら従属すること」だという。SMではあるが、加虐性が強いわけではない。支配したいが、暴力的にするのではなく、相手が自ら彼を頼るような状況を作り出す。いたずらっ子な自分を怒らずに圧倒的な論理で組み伏せてほしいという欲求もある。それが「支配しながら従属すること」なのだ。

「ある意味で、お互いの心を読み合う楽しさもありますね。自分の本筋である家庭や仕事に悪影響がない遊びの範囲で非日常を楽しむ。それができるのが大人のつきあいだと思うんです」

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