新婚旅行でも“拒否”した妻、「せめて2カ月に1回は…」 自信喪失の42歳夫が下した決断は

  • ブックマーク

日常生活も変わっていて…「それぞれがウーバーイーツ」

 いざその日になり、「今日はしようね」と言っているのに、妻はぐずぐずしている。優輔さんは「我ながらけなげに」ベッド周りをきれいにしたりして準備をすすめる。ところが午前0時を回り、2時になっても彼女はベッドにやって来ない。そして結局は疲れたから寝ようということになってしまう。

「はっきり拒絶すると大きな亀裂になるから、彼女はするようなしないような、グダグダした態度をとりながら僕があきらめるのを待っている。彼女自身も、どうしたらいいかわからなかったみたいですね。セックスに興味はもてない、だけど結婚生活はそれなりに快適だった。だからセックスしなくてすめば、それに越したことはないと思っていたんでしょう。結婚して10年で、たぶん僕たちは10回もしていないと思います」

 日常生活も変わっていた。家族なのだから、お互いに仕事の都合がつけば夕飯くらいは一緒に食べるものだと優輔さんは考えていた。一般的に「家族はそろって食事をする」のが当然だと思う人は多いだろう。だが玖美さんは、それぞれが好きなものを食べればいいと思っていたようだ。

「あなたが食べたいものと私が食べたいものは違うと思う。それに食べたい時間だって違うでしょ。お互いに相手に合わせて苦痛を感じるより、自分の好きなことを優先させたほうがいいんじゃないかと妻は言うわけです。合理的ではあるけど……」

 もともとお互いに仕事をしながらひとりで暮らしていた。だが玖美さんは片付けが苦手だったようで、家事に関しては料理も含め、優輔さんのほうが手際がよくて上手だという。しかも彼はそういうことが苦にならないので、新婚当時は彼が料理を作ることもあった。

「そういうときは、おいしいと食べてくれたけど、たぶん彼女にとってはそれがどんどん負い目になっていったんでしょうね。生活費は折半なのに、夫だけが家事をしているというのが耐えられなかったんだと思う。だからいつの間にか、うちは共働きのルームシェア状態になって、同じ家にいながら、それぞれがウーバーイーツという状態になっていました」

玖美さんの反応に「冷めた」

 心も体も離れていく。優輔さんはそんな気がしていた。友人に話すと、誰もが「離婚すればいい」と言った。もちろん彼自身も、それはわかっていた。だが彼は、すでに離婚するエネルギーさえなくなっていた。

 せめて性的な満足感があれば、それだけで幸せなのにと思ったそうだ。妻に拒絶されることで、彼は「男として」自信を失っていった。

「あるとき、金曜の夜も土曜も夜も帰らず、日曜の朝に帰宅したことがあったんです。そうしたら妻は僕の顔を見て、ごく普通に『お帰り』と言った。どこに行ってたのとも言わなかった。機嫌が悪いわけでもない。普通、2晩も帰らなかったら心配するだろうし、警察に届けたほうがいいんじゃないかと誰かに相談したりすると思うんですよ。でも妻は、あたかも昨日も一緒にいたかのように、お帰りと言った。この人はそういう人なんだと思ったら、なんだか気持ちが吹っ切れたんですよね」

 自分にとって、死ぬまでセックスがない日々は耐えられない。だが嫌がる妻に無理強いするのは気が進まない。そこで家庭を平和に保ちながら、自身も満たされるためには性的な部分は「外で」するしかないと心を決めた。

 どうせなら、自分の望む性的関係を追求していくしかない。彼は自分の性的指向をどんどん実現にうつしていくことにした。

 ***

 優輔さんは実はSM愛好家……。記事後編では「SM不倫」の模様と、予期していなかった玖美さんの変化について紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。