「午後3以降のうたた寝はダメ」「寝られない人は“夜活”を」 認知症を予防する快眠術

ドクター新潮 ライフ

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眠気のゴールデンタイム

 睡眠のメカニズムと認知機能との関係性について知っていただいた上で、ここからは、より実践的な快眠術をいくつか紹介していきましょう。

 冬山で遭難してしまった人物が、「寝たらダメだ、死んでしまう!」と揺すり起こされるシーンを、ドラマや映画でよく見かけると思います。実はここに、快眠のためのヒントが隠されています。

 このシーンは、体温が下がると眠気が生じることを意味しています(冬山ではそのまま亡くなってしまう)。逆に言えば、体温が上がると人間は興奮し、覚醒するわけですが、このメカニズムを快眠のために利用すればいいのです。

 湯船に全身漬かると、深部体温は入浴前より0.4度ほど上がるといわれています。そして、入浴前より深部体温が下がるのが「湯冷め」です。この湯冷めの時間帯は眠気を覚えやすく、具体的には入浴後30分から1時間が、眠気が襲ってくるゴールデンタイムです。このゴールデンタイムの間に眠気が襲ってきたら、その機を逃さず直ちに寝床に入ることが、「30分以内」の入眠に役立つはずです。

お勧めは「横寝」

 いざベッドに入ったら、せっかく副交感神経が優位(リラックス状態)になっているのですから、スマートフォンを見たり、出版社には悪いのですが、読書したりするのはお勧めできません。交感神経が優位(興奮状態)になり、睡眠が妨げられるからです。

 とはいっても、現実的にはそれらをすぐにはやめられない方が少なくないのではないでしょうか。そういう方には、ベッドでのスマホや読書はやめようと訴えている睡眠専門医の立場から大きな声では言えませんが、ここだけの話、スマホだったら例えばオセロゲームをする、本であれば愛読書を読むのが、過渡的措置としてはいいと思います。オセロゲームも、内容が分かっている愛読書を読むのも、ほとんど「惰性」なので、自律神経が優位になりにくいからです。ゆめゆめ、「待望の新刊」をベッドでは読まないようにしてください。

 最後に、寝る姿勢について触れたいと思います。お勧めは「横寝」です。体の右側ないし左側を下にして、横を向きながら、抱き枕に抱き着いて寝るという具合に。整形外科医は体にかかる負担を分散することを重視するので、いわゆる仰向けで寝るのを推奨する方が多いようですが、睡眠専門医としては仰向けはお勧めできません。

 なぜなら、睡眠時無呼吸症候群を誘発しやすい寝方だからです。実は発症していない人も1時間に数回は無呼吸が生じているのですが、仰向けは舌が咽喉の奥に落ち込んで気道を塞ぎやすい姿勢であるため、この呼吸異常の悪化を招くのです。そのため、横寝で気道を確保する寝方をお勧めしています。

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