「午後3以降のうたた寝はダメ」「寝られない人は“夜活”を」 認知症を予防する快眠術
麻薬類似薬
そう言われても、どうしても今夜から眠れるようにしてほしい。そういう患者さんに打てる手がないわけではありません。「睡眠薬」です。しかし、そこには極めて危険なリスクが伴うと言わざるを得ません。
睡眠には脳が起きていて体は休んでいる「レム睡眠」と、脳が眠っていて体は起きている「ノンレム睡眠」があることはみなさんご存じだと思います。そして近年の研究で、レム睡眠の時間が少ないとアミロイドβがたまりやすいことが明らかになっています。従って、認知症の予防には、レム睡眠の時間をしっかり確保することが重要なのです。
ところが、最近は処方が控えられているものの、7~8年前まで「主流」だったベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、ごく簡単に言うと意識を遮断する薬です。「睡眠=意識を遮断すること」という正しくない認識の下で広く使われてきたのですが、これでは“脳が起きていて体は休んでいる”状態のレム睡眠が損なわれてしまいます。従って、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を服用し過ぎると、認知機能に悪影響が出る恐れがあるのです。しかも、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は麻薬類似薬とも言われ、その依存性も問題視されています。
「真の睡眠薬」
そこで近年、意識を遮断するベンゾジアゼピン系の睡眠薬とは違い、メラトニン受容体に作用したり、睡眠と覚醒を調節し後者の状態を維持させる神経伝達物質であるオレキシンの働きを抑えたりする、「真の睡眠薬」と呼ばれる薬が相次いで発売されています。具体的には「メラトニン受容体作動薬」「オレキシン受容体拮抗薬」「オレキシン受容体選択的拮抗薬」の3種類です。
睡眠薬を服用せざるを得ない場合でも認知機能を維持したい、と考えるのであればこの3種類がお薦めです。ただし、注意点があります。夢を見るのはレム睡眠中なので、「真の睡眠薬」を服用してレム睡眠の時間が増えると悪夢を見る可能性も増します。睡眠の観点から考えると、それは必ずしも悪いことではないのですが、「悪夢を見たくない」として、これらの睡眠薬を忌避される方もいます。そうした患者さんにも、「レム睡眠の大切さ」は理解していただければと思います。
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